ロゴや色彩によって「らしさ」を味付け

神谷 御社はLINEヤフーらしさを大事にしていると伺っています。デザイン開発と出願に当たって、どのようなところが「らしさ」のポイントになるのでしょうか。

町田 デザインのプロセスでお話しすると、LINEヤフー「らしさ」は明文化されています。それをUIガイドラインという基準に落とし込み、デザインが基準を満たしているかを見ています。ただUIガイドラインを守っただけではユーザーの使いやすさにとどまってしまうので、「らしさ」の味付けをするために、ロゴや色彩のバランスなどに配慮しています。ただし、優先するのはユーザーの使いやすさの追求です。

伊藤 ユーザーの使いやすさを極めていくと、自然にLINEヤフーらしさになっていくのですね。

高部 知財の立場で「らしさ」の話をすると、弊社のサービスは多岐にわたるのですが、例えばユーザーの操作性を極めると操作のボタンはシンプルになり、しかもどのサービスでも同じような位置に置かれている。ユーザーファーストという視点が全てのデザインに貫かれていることに驚きます。同時に他社と差別化することは容易ではないと感じます。

町田 それを狙ってやっているわけではないのです(笑)。あるUIができると、社内のいろいろな部署の人がユーザーになりきってチェックします。「Yahoo!天気」アプリなら、まず「Yahoo!天気」サービスの人が使ってみる。その次に天気担当以外のエキスパートたちがチェックする。その後、ユーザーに触ってもらって意見をもらうという磨き込みをします。結果、それが使いやすいプロダクトになって、成功事例となって社内に蓄積されて、LINEヤフー内で共有される。そんなふうに切磋琢磨(せっさたくま)して生まれたナレッジが新しいプロダクトに還元されていくから「らしさ」が形成されているのかもしれません。

高部 ユーザーファーストで追求した直観的で使いやすいシンプルなデザインは、意匠法で言うと創作非容易性(公知のデザインから容易に創作できないこと)が問われるところですが、そこはデザイナーが苦労した部分なので、なんとか守りたいと考えています。

町田 シンプルというところでお話しすると、ユーザーがストレスなく自分がやりたいことを達成できる。もっと言えば、デザインを意識せずに「無」で達成できるところを追求しています。「このデザインいいね」とすら思われない、研ぎ澄ましたシンプルなものを作っています。画面にボタンを1個置くだけでも、どこがベストの位置なのか、どの色なのか、フォントサイズは?余白は?と考えながら1ピクセル(画像の最小単位)ずつずらしたボタンを何百個も作ってテストして完成させます。

高部 そこから先は知財担当が頑張るところです(笑)。シンプルなものはまねされやすいので、悪用されてユーザーに迷惑を掛けることだけは避けたいと思っています。

(その2に続く)

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