養豚を見える化する。そこから全てが始まる
こうした現状に対して「養豚業の生産性向上と環境負荷の低減を両立させるデータソリューションを提供し、その上で世界のタンパク質危機の回避にも貢献したい」と設立されたのがEco-Pork(エコポーク)である。

手にしているのは、バイオセンシングカメラの1号機。豚舎の天井を走行しながら豚の成育や体調情報などを自動取得する
神林隆代表取締役は、「私たちの試算では、世界の人口増に伴い早ければ27年には動物性タンパク質の需給バランスは崩れ、世界的なタンパク質危機を迎えます。養豚が危機に対応でき、より持続的な産業になるためには、養豚が抱えるさまざまな課題を解決する手段が必要で、私たちは各種の高度なITを活用した豚の管理システムを構築することで養豚業の課題解決に貢献したいと考えています」と語る。
Eco-Porkはそれを養豚経営支援システム「Porker」で提供している。その詳細を説明する前に、養豚業の大まかな流れを知っておく必要がある。
一口に養豚業と言っても、①豚の繁殖や改良の元となる種豚を生産する「種豚経営」、②繁殖豚を管理しその子豚を出荷する「繁殖豚経営」、③子豚を肥育して市場に卸す「肥育豚経営」の三つに分かれる。現在、ほとんどの養豚事業者が繁殖から肥育までの一貫経営に取り組んでいる。
母豚は通常、約114日の妊娠期間を1回として2年間で約5回妊娠・出産し、1回に10頭前後の子豚を産む。子豚は約180日かけて肉豚に育てられ出荷される。この過程で、母豚の発情兆候の検知や種付け、子豚の母乳育成から人工乳への切り替え、豚舎の衛生維持など、実に細やかな作業がある。
しかし、「発情から妊娠、出産、育成などは、ものづくりでいえば製造工程そのものですが、多くの養豚現場では一連の生産管理が経験則でなされていました。私たちEco-Porkは、養豚業のプロセスの全容を定義しました」(神林代表取締役)。