同社は線路・土木・建築・環境の4部門それぞれで培った技術を相互に生かし合うことで、事業全体の強みを高めている。こうした多様な事業領域を互いに連携させることで、シナジー効果を発揮させ、鉄道関連工事を総合的に担う「ナンバーワン」「オンリーワン」企業を目指している。

交通インフラを守り、未来を拓く。鉄道関連工事のリーディングカンパニー暑熱対策事業 新横浜駅前公園暑熱対策施設「木陰のトンネル」

鉄道インフラを支える
高度技術と独自工法

 主力の鉄道関連工事は複雑な構造物を扱い、厳格な安全ルールが課される特殊な分野だ。その施工やメンテナンスに特殊なノウハウを要するため、対応できる企業は限られている。

 伊勢社長は、「当社は確かな技術力に裏打ちされた施工品質、ならびに多くの大型保線機械を活用した効率施工により、多くの鉄道会社から高い信頼を獲得しています」と語る。その取り組みの具体例として、伊勢社長が挙げるのは次のような事例だ。

交通インフラを守り、未来を拓く。鉄道関連工事のリーディングカンパニー1350tクレーンによる線路上空の道路橋桁一括架設(東北本線岡本・宝積寺間高根沢こ線橋新設工事)

 線路事業では、大型保線機械をフル稼働させ、線路のメンテナンス工事を実施している。さらに、世界初となる「新幹線レール交換システム(REXS)」を用い、新幹線レールの運搬から積み降ろし・溶接・交換までを一連作業で行う仕組みを確立し、安全かつ効率的な施工を実現している。

 土木事業では、22年3月の福島県沖地震を契機に開発した新幹線電化柱の耐震補強工法をはじめ、ホームドア工事に活用される点字ブロック一体型の鋼製覆工板など、災害対応や安全性向上につながる新技術を次々と生み出している。

 建築事業では、駅ホームの耐震補強工事において、無溶接で施工できる「スマートウィクシス・スマートボクシス工法」を展開。従来の溶接補強に比べてケーブルの撤去・復旧作業が不要となり、特許を取得したこの技術は、コスト削減効果が高いとして鉄道事業者から高い評価を受け、多くの駅で採用されている。

工事の旺盛な需要を背景に
財務目標を上方修正

 43年に創業100周年を迎える同社は、「交通インフラメンテナンスのリーディングカンパニー」になるという長期ビジョン「TOTETSU VISION 100」を掲げている。

 これを実現するために策定された「アクションプラン2029」では、鉄道関連工事の旺盛な需要を背景に、初年度から想定を超える成果を上げたことから、さらなる高みを目指して、財務面では売上高1900億円以上、ROE(自己資本利益率)10%以上という高い目標を25年に改めて掲げた。