この三つの理由をJSOLにもたらしているのが、「テクノロジー企業」としての顔だ。幅広い業界・業種に向けたソリューションの提供に定評のある同社には大きな強みがある。

 それは、基幹業務用のSAP、Bizʃや顧客管理・営業支援用のSalesforce、業務自動化・効率化を実現するServiceNowなどでのシステム構築だ。こうした国際標準に近い業務プラットフォーム上で、さまざまな業界・業種に向けたテンプレートを数多く開発・運用しており、その技術力はトップクラス。

 例えば、会計ソリューションのBizʃをTBSホールディングスに導入したことを機に、放送業界特有の会計業務をテンプレート化したJ's-TVの開発につなげた。

 また、解析・シミュレーション領域では、衝突・構造解析ソフトウェアのAnsys LS-DYNAをトヨタ自動車をはじめとする多くの大手自動車メーカーが導入したことは、この分野でのJSOLの技術力の証しだ。

 このテクノロジー面での強みをベースに、「『コアビジネスの拡大』と『新規ビジネスの創出』という二つの成長プロセスの推進に取り組んできました」と、永井社長は明かす。

 既存のコアビジネスの拡大では、これからのビジネスにおいて避けては通れない生成AIの組み込みなどを推進しているほか、放送業界で培ったBizʃの多くの実績やノウハウを応用し鉄道業界に展開したり、Ansys LS-DYNAを自動車業界だけでなくヘルスケア領域にも応用したりといった取り組みも進める。

 新規ビジネスの創出に向けては、社内の新規事業創出プログラム「CLUTCH(クラッチ)」を24年度に立ち上げた。初年度だけで260件以上の新規事業アイデアが社員から提案され、うち7件が社内での事業性実証のステージに達した。現在、海外現地法人マネジメント用プラットフォーム「JRISE(ジェライザ)TM」の提供を開始したほか、多言語動画生成AIソリューション「ICHI-GEKI(イチゲキ)TM」などが実用化に向かっている。

「当社の持つ高度なテクノロジーをさらに磨き続ける取り組みが、コアビジネスの拡大と新規ビジネスの創出、どちらのプロセスでも基礎にあります」(永井社長)

安定した基盤の上で
変化と成長を継続

 JSOLの成長をリードするのが「テクノロジー企業」としての顔だとすれば、成長を支える役割を担っているのは「安定企業」としての顔だ。

 同社は、NTT DATAとSMBCグループという二つのグループを基盤としている。

 JSOLの源流は、1969年に旧住友銀行の情報処理部門の一部が分離独立して誕生した「日本情報サービス」にさかのぼる。その後、シンクタンク部門も併せ持つ「日本総合研究所」への再編を経て、06年、銀行グループ以外の顧客に向けたITサービスを分割し、「日本総研ソリューションズ」を設立。09年にはNTTデータが資本参加し、JSOLに社名変更した。来る26年、JSOLは日本総研ソリューションズの設立から20周年を迎える。

 NTT DATAはITサービスで、SMBCグループは金融で、それぞれ国内最大級の存在感を持つグループ。この二つに資本やテクノロジーの面で足場を持つことの意味は大きい。

 とはいえJSOLでは、手掛ける案件のうち自社が顧客から直接受注した分の比率(プライム案件比率)が94.7%。親会社経由での受注の比率は5%ほどであり、JSOLが独自の技術と実績でも評価されていることが分かる。

 銀行の一部門として生まれて金融向けシステム開発からスタートした後、製造や製薬、食品・消費財、建設などのものづくり産業へと領域を積極的に拡大。現在ではさらに流通、放送・広告、官公庁、社会インフラなどの分野でも強みを発揮し、クライアントの総数は1300社を超える。