そんなわたしの胸中を知ってか知らずかグローリアは「以前は2人で過ごす時間を楽しみにハワイから訪問して来たけれど、いまでは頻繁に会えるし、誕生日や記念日にファミリー・ヴィジットもできるようになりました」と続けた。
結婚後たった18カ月で夫がジョン・レノンを殺害してから、どれほど厳しい40年を送ってきたのだろうか。姓も変えず、チャップマンの妻であることを隠さずに夫を支えて来たグローリア。その細い体のどこにそれほどの強さがあるのか。
そんな思いにとらわれていると人影が見えた。現れたのはマーク・デイヴィッド・チャップマンだった。ブルーの瞳で私を正視したチャップマンが開口一番「君は誰より粘り強いリポーターだよ」と言った。
「ベルトは嫌いなのに今日は特別にしているんですよ」とグローリアは言って、「6月には結婚40周年を迎えるんですよ」と微笑んだ。
彼女が飲み物を買いに席を立つと、
「ハワイは遠いから、グローリアも前にはなかなか来れなかった。面会に来てもすぐ帰ってしまう。別れるのがすごく辛かったのですが、今ではグッドバイと言って、また数日後に来てくれるから、ぼくの生活は本当に変わりましたよ」
となごやかに話しはじめた。
知的で思いやりに富んだ
チャップマンの意外な一面
「わたしのことは覚えていましたか?」と聞いてみた。
「もちろんだ!君のことはずっと考えていたのです。(文通が)途切れてしまったのは、ぼくのせいでした」
連絡が途絶えたのはわたしのせいだった。写真を送って欲しいと言ってきた言葉に狂気の一片を見たと思って恐ろしくなったからだ。しかし、連絡が途切れたのは自分のせいだと言ってくれた彼の精神状態にわたしは安堵した。
目の前のチャップマンは思ったより知的で、頭の回転も速く、相手の気持ちをすぐにつかめるようだった。
グローリアにハワイから移ってきてくれと頼んだのですかと訊くと、
「そうですね、そう言ったんです。神のお導きですよ」と言うと、こう続けた。
「ジョン・レノンについてはパンフレットをつくって所属するキリスト教団体から各刑務所の囚人に配っているんです」







