
“リベラル派攻撃”強めるトランプ大統領
「MAGAの立役者」の悲劇に異例の対応
米国西部ユタ州で9月10日、保守活動家チャーリー・カーク氏が銃撃され死亡した事件の展開は、米国社会の分断と党派対立の影響が若年層に広がりつつある現状を改めて示した。
31歳のカーク氏は、保守系団体「ターニング・ポイントUSA(TPUSA)」を主宰し、若年層への保守思想の浸透に努め、2024年の大統領選挙でトランプ大統領が、若年層からの得票率を上昇させた立役者とされている。
MAGA(Make America Great Again)陣営でも屈指の有力者の「悲劇」に、トランプ大統領は、連邦政府に半旗掲揚を指示し、文民に最高位の「大統領自由勲章」の授与を決めた。バンス副大統領も9月11日の米国同時多発テロの追悼式典への出席を取りやめ、現地入りして遺体搬送に同行する異例の対応となった。
21日にアリゾナ州で行われた追悼集会では、大統領・副大統領に加え、ルビオ国務長官らトランプ政権の重要閣僚らが演壇に立ち、トランプ氏は演説で、「米国の自由のための殉教者」などと称賛。その一方で「暴力の大部分は左翼から発生している」と語り、民主党やその支持層のリベラル派を攻撃した。
トランプ陣営からの攻撃を受けて、民主党側もオバマ大統領らが反論、共和、民主の両党がそれぞれ、相手陣営が暴力に傾いていることを、非難し合っている状況だ。
事件の数日後、22歳の容疑者が拘束され、訴追されたが、現時点では、この人物の思想的な背景やカーク氏を狙った動機などもはっきりしていない。
にもかかわらず政治が“過熱”するのは、来年の中間選挙、さらには「トランプ後」の28年の大統領選挙をにらんだ思惑があると考えられる。