同社総務部(人事)の大矢進一課長は、頭を悩ませていた。
「服装などの目に見える乱れは、注意することができます。でも、ニオイとなると……。目に見えないものですし、どこまでが社会常識の範囲なのかも曖昧ですよね。個人の生活や、もしかしたら体調に原因があるかもしれません。ニオイを注意すること自体が、ハラスメントだととらえられてしまう恐れもあります」(大矢課長)
しかし、社内で起きていることは社外でも起きているかもしれないもの。営業職を多く抱える同社にとって、ニオイ問題を野放しにするわけにはいかない。ただでさえ、最近の日本の夏は暑い。それに加えて、東日本大震災以降は節電のため冷房の温度を高く設定しているオフィスも多く、汗をかきやすい環境が増えている。同社もクールビズを導入してはいるものの、営業先へはジャケットとネクタイを着用して訪問することがあるのだという。
そこで同社がとった策は、「外堀」から埋める作戦だ。
「ある業界紙で、マンダムさんが『デオドラント対策のセミナー』を実施しているという記事を見つけて連絡を取ったところ、弊社でもエチケットセミナーとして実施してもらえることになりました。セミナーという形をとれば直接的に注意してトラブルになることも避けられますし、セミナーを開催するという告示を社内に出すこと自体が、エチケットに対する意識を高めることにもつながると思ったんです」(大矢課長)
「人の体臭ってこんなニオイなの?」
エプソン販売のエチケットセミナーで驚きの声
マンダムはデオドラント商品を多数手がける業界大手。2009年からメディア向けに「デオドラントセミナー」を開催してきた実績がある。
セミナーには同社に所属する「臭気判定士」という国家資格取得者も参加し、ニオイが発生するメカニズムなど最新のニオイ研究について報告。制汗スプレー、ボディウオッシュ、ボディペーパー、消臭スティックなど、デオドラント商品の使い分けも指南する。