JTBグループが挑戦する
世界発のビジネスモデル
では具体的な取り組みはどうなっているのか。法人向けのインバウンドにおいて、JTBグループは07年のツムラーレ(欧州)を手始めに14年のツアー・イースト(シンガポール)と、海外の大手旅行会社をM&Aなどを活用して、次々と傘下に収めた。
「世界中のお客さまのニーズに応えるには、相応のネットワークが不可欠。その基盤整備・拡充をM&Aを活用して迅速に進めています」(武田統括部長)
その上で、JTBグローバルマーケティング&トラベルが手掛けてきたGMTブランドと、新たに傘下入りした企業の地域ブランドによって「グローバルDMC(Destination Management Company=地域資源を活用したオンリーワンのサービスを提供する企業)ネットワーク」を構築。それぞれの連携を深めながら、DMCを目指している。
個人向けのインバウンドでは、「着地型」のサービスをグローバルに拡充。欧州や北南米、アジアで多言語による観光バスやシャトルバスを運行中だ。特にバリ島でのバス事業は、JTBグループの独壇場と化している。
「これまで、バリ島の移動手段はタクシーに限られており、観光バスが参入できなかったのです。しかし、JTBグループは観光を通じて現地経済に貢献してきた功績が認められ、昨年から唯一の公共交通機関として、KURA-KURA社がバスの運行を始めています」(武田統括部長)
M&Aについては、個人向けのアウトバウンドの拡大にも積極活用している。昨年3月には、シンガポールの大手旅行会社・ダイナスティを買収。同社の経営資源を活用し、ASEAN諸国でアウトバウンドを拡大する方針だ。JTBグループに加わったことは、ダイナスティが大きく飛躍する機会をもたらしたようだ。同社のペリー・ネオCEOは語る。
「JTBグループはアジアでトップシェアを誇り、高い実績と信頼を獲得しています。私たちはシンガポールでトップクラスの地位に居ますが、JTBグループの一員となることで、より大きなマーケットであるASEAN、アジア全域にビジネスを拡大できるでしょう」
併せて、法人向けのアウトバウンドではJTBアジア・パシフィックが10ヵ国に展開する拠点で、日本の法人営業のノウハウを伝授する「SAMURAIプロジェクト」が進められてきた。ブラジルでは現地企業との合弁事業を起こし、その他の未進出地域も開拓中だ。
以上見てきた通り、もはやJTBグループのビジネスは「日本発」と「日本着」に限定したものではない。交流文化事業は、「世界発(グローバルアウトバウンド)」と「世界着(グローバルインバウンド)」へと拡大している。武田統括部長はこう締めくくる。
「アジアで圧倒的ナンバーワンの地位を確立するとともに、従来のスター型(日本中心)からクロスリンク型拠点網への転換を図っています。これは世界発、世界着のビジネスモデルへの挑戦です」
JTBグループの目指すこのビジネスモデルの構築が進めば、世界の交流もさらに進んでいくことになるだろう。
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