日本で作られた食品や農産物は人気が高く、海外のバイヤーから引く手あまただ。その一方で、中小の食品事業者が海外販路の開拓に苦労しているのも現実。両者を円滑にマッチングさせ、食農の海外拡販を通じて、人と人との交流を深める事業にもJTBグループは注力している。
JTBグループは商談会や販売フェアなどを開催して、日本の食品や農産物の海外販路開拓を積極的にサポートしている。世界中の人に広く消費してもらいたいと願う売り手(サプライヤー)と、付加価値の高い日本の食品を求める海外の買い手(バイヤー)との出会いの場を提供している。いわゆるビジネスマッチングである。
JTBグループは、従来の「総合旅行業」から、グローバルなスケールの「交流文化事業」へと飛躍を遂げている。さまざまな方面で人と人との交流を深める事業を進めており、ビジネスマッチングもその一環だ。
商談成約に結び付く
マッチングにこだわる
食農海外販路支援室部長
JTB西日本法人営業大阪支店の西川太郎氏は、食農海外販路支援室の部長として同事業の陣頭指揮に立ってきた。
「食と農は観光との親和性が高く、日本の食べ物を目当てに訪れる訪日旅行者も少なくありません。海外販路の拡大に力を入れるようになったのは、農林水産省からの委託で2005年に台湾の高級百貨店に開いたアンテナショップがきっかけです。
その際、とあるお客さまがクレームを寄せてきました。今まで食べてきたブドウと味が違うので、アルコールでも混ぜているのではないかと疑ったのです。ピオーネという糖度の高いブドウで通常のブドウよりも甘みが強いと説明したら、気に入って3箱もまとめ買いしてくれました。もっと日本の食と農を海外に広めることこそ、日本の成長戦略である農産物の輸出拡大・地域振興に貢献できると感じた瞬間です」(西川部長)
こうしたビジネスマッチングは、他に例を見ないわけではない。「交流文化事業」を推進するJTBグループは、さらに一歩も二歩も踏み込んだ展開をしている。単に出会いの機会を提供するだけにはとどまらず、実際のビジネスに発展していくための配慮に余念がない。
「一般的な見本市は商品のPRに終始し、その場で商談に発展するケースは限られているのが実情。成約率を高めるためには、入念な事前準備とアフターフォローが不可欠と私どもは考えました。単に海外のバイヤーを集めるだけではなく、いくらの価格帯でどういった商品を取り扱いたいのかを事前に彼らからヒアリングし、データを蓄積しています。それを基に、海外販路に意欲のあるサプライヤーに参加していただき、質の高い個別商談の機会を提供します」(西川部長)
JTBグループが手掛けるビジネスマッチングには、こうしたアポイント型の個別商談という大きな特色がある。サプライヤーには当日に先駆けて事前研修会を開催し、後日には商談報告会や商品評価分析などを通じ、改善点の提案も行う。ビフォアからアフターまで、旅行業で養った入念な心配りが反映されているといえよう。