「鉄道の優位性は、第一に大型トラック65台分を一人の運転士で運べる大量輸送性。また、CO2排出量がトラックの9分の1、船舶と比べても約半分と環境性にも優れている。JR貨物の貨物列車は全国を走り、1日に地球5周分の距離を運行しているが、定時発着率は約95%と世界でもトップレベルにある。こうした鉄道輸送の特性を活かし、個々の荷主の安定輸送に貢献し、併せてモーダルシフトという国家的な要請に応えていかなければならない」(石田氏)
トラック輸送とも協調する時代へ
モーダルシフトの波は物流の現場にも様々な変化をもたらしている。
「メーカーや流通といった荷主企業を訪問しても、トップの方々から『困っている』という声を聞くことが非常に増えた。経営において製品や材料の安定輸送の確保が切実な課題となっていることを実感している」
荷主企業だけでなく、これまで鉄道輸送との関係があまり深くなかった倉庫会社や国際物流業者、冷凍・冷蔵輸送会社、さらには海運会社、航空会社からも輸送に関するオファーや問い合わせが増えているという。こうした事業者はこれまで国内輸送の大半をトラックに委ねてきたが、ドライバー不足で車両調達はままならないことへの危機感から、輸送手段の多様化を模索し始めている。
そして大きな変化の一つは、トラック運送事業者からも輸送依頼が増えていることだ。
「特に中長距離の幹線輸送では、トラック事業者自身が輸送力を確保できずに困っているケースも増えている。ある県のトラック協会では協会を挙げて鉄道へのシフトを検討する動きも出始めた。もともと鉄道輸送は貨物駅の"両端"の集配をトラックにお願いする協業関係にあったが、こと幹線輸送においては競合していた。しかし、今後は物流円滑化のためにも幹線で輸送力を補完し合うパートナーシップ構築が大事になってくる」
大手トラック事業者などが加盟する全国物流ネットワーク協会(会長 瀬戸薫・ヤマトホールディングス取締役相談役)は8月、「陸運サミット」(仮称)の創設に向けた準備会合を開いた。ここで主要テーマになったのが、トラックと鉄道の将来を見据えた最適なモードミックスのあり方。
「国内物流の将来を見据えたとき、トラックと鉄道との協調によるベストミックスの追及を真剣に考えなければならない時代が来ている」(石田氏)