輸送障害時の対応を強化
鉄道貨物輸送がこれまで以上に信頼される輸送機関になっていくために避けて通れないのが、安定輸送の確保だ。
平時においては約95%という高い定時発着率を誇る同社だが、自然災害などで輸送障害が起きた場合の対応にはまだ多くの課題を残している。荷主企業からの改善要望でもっとも多いのもこの部分だ。
「残念ながら日本は台風や地震など自然災害が多く、こればかりは避けられない。大事なのは、インフラの未然補強と輸送障害が起きた場合の代替輸送の確保や迂回輸送などの対応。復旧時期や荷物がどこにあるかといった情報を迅速に提供することも重要だ」(石田氏)
同社ではすでに国の支援なども受けながら、利用運送事業者(通運事業者)との連携によるトラック代行輸送体制の確立、グループ会社によるトラック保有、途中駅でのコンテナ取り降ろしのための駅インフラ拡充などに取り組んでいる。また、土砂崩れなどの発生が起きやすい危険箇所について、国や地方自治体に対して、未然の補強を要請している。
国土交通省は「物流部会」を「交通政策審議会」に格上げし、災害対策を含むモーダルシフトの統合対策を取りまとめているが、これは近年にない非常に大きな動きだ。
JR貨物は安全は全てに優先するとの基本方針の下、災害以外の事故防止対策にも万全を期している。
「鉄道の時代」は必ず来る
JR貨物の業績は、全体では黒字を確保しているものの、これはマンション・商業施設など不動産事業の100億円を超える利益によるもので、本業である鉄道事業は万年赤字構造が続いている。
これを2016年度に鉄道事業を黒字化し、2018年度には経営の自立化を達成することが、同社に課せられた目下最大の経営課題だ。
外にはモーダルシフトの波が、内には改革のうねりが益々高まっており、その成果は現に数字にも現れ始めている。今年度も約半年が経過したが、鉄道事業収支は前年を大幅に上回り、高く設定した目標値に近づいてきている。
「来年度に鉄道事業の黒字化を達成という大目標はまだ遥かに遠いが、不可能ではないと思っている」
また、240を超える全国の貨物駅の中のセントラルステーションとも言える「東京貨物ターミナル駅」(東京・大井)に、大型物流センターの構築を計画している。ここに多くの荷主企業や物流事業者を誘致し、鉄道貨物の増送につなげる青写真を描く。
「東京港や羽田空港にも至近の、床面積5万坪以上を持つ、都内有数の最新鋭物流センターだ。鉄道復権のフラッグシップ(旗艦)にしたい」と石田氏。
「JR貨物に来る前、多くの人から『鉄道貨物の将来は明るくないぞ』と忠告された。だが、最近では『ひょっとしたら大化けするかもしれないね』と言われることが増えた。鉄道貨物の明るい未来のために、やらなければならないことはまだまだ多い。しかし、やりさえすれば鉄道の時代が必ずやって来る。まずは全社員の心を一つにすることだ。それだけのポテンシャルがこの会社にはあると、いまは確信している」(石田氏)