生活者の「便利」を促す
西村 「配送の共同化」で、地方の過疎地で事業者の連携を支援するというのはBtoBだけでなく、BtoCの面でも効果的な施策になりますね。
羽尾 我々が「物流生産性革命」として目指しているのは、1つは「成長加速物流」で、物流が日本の産業や経済の成長を加速させる役割を果たすために生産性を上げましょう、というものです。もう1つは「暮らし向上物流」で、物流の生産性をあげて国民生活を直接よくしましょう、というものです。
先ほど申した過疎地での物流網も、サービスを止めたい事業者になんとかお願いして維持していただかないといけないのですが、そのために、宅配事業者同士が組む以外にも、例えば、バスと宅配事業者が連携するケースがあります。
過疎のバスは利用者が少なくても自治体が補助金を投入して維持していますが、もっと効率的にするために、過疎地で宅配トラックが運んでいたものをバスで人と一緒に荷物も運べば、自治体はその分の宅配事業者から手数料が入り、物流事業者もトラックが省略できます。バスではなくて、地方鉄道でも同様に旅客と一緒に宅配荷物を運ぶという、いわゆる「宅配列車」の取組の検討も進みつつあります。
また、一歩進んで、物流事業者が荷物を運ぶついでに、届け先で高齢者のための見守りや買い物代行を行なう。そういったいわゆる生活支援サービスと物流業を融合させるということも事業者にとってもは収益源になりますし、自治体や住民にとっても暮らしが良くなります。
さらに、今、ネット通販を利用する人が多くなっていることもあって、宅配の利用も増加していますが、家族みんなが外で働く比率が増えている結果、再配達が非常に多くなっていて、これが事業者の大きな負担になっています。トラックドライバー不足だと言いながら年間9万人が計算上はその再配達に関わっていることになるんです。また、CO2も、それだけ余分に排出されているわけですから、これらは社会的な損失としても見逃せない問題です。
そこで出てきたのが、コンビニや駅の宅配ロッカーです。利用者の利便を向上させながら宅配の再配達を減らしていくという観点からすると、利用者の都合や希望にあわせていろんな拠点で受け取ることができれば一部再配達の削減につながっていきますので、宅配ボックスの設置が広がり始めたという今の動きというのは非常に好ましいことだと思います。
その場合、特に駅のような公共空間はボックスを置くスペースも限られていますし、利用者にとって、宅配事業者の違いによって受け取れるロッカーが駅ごとに限られていたり、同じ駅でも東口、西口で制限されてしまうと非常に不便ですから、やはり同じ拠点ならどの事業者の荷物も受け取れる、今それをオープン型ロッカーと言っていますが、それが利用者にとっては便利です。
事業者には、そこの部分では、競争や縄張り争いをしないで、できるだけ協調してやっていただければと思っています。さらに、将来的には、各企業のオフィスや学校などにも宅配ボックスが広がっていくことも期待されますね。
そうした利用者の利便性向上のための施策については、行政としても、何らかの支援の対象にしていくことができないものかと前向きに考えています。
物流を変える「技術開発」を促す
西村 物流業界では新技術にも注目が集まっていくと思います。今、最も想定しやすいのはドローンの実用化ですが、今後、物流の姿というのはどのように変わっていきますか。
羽尾 まず、ドローンは昨年くらいから非常に脚光を浴びて、物流分野での活用が話題になってきましたし、期待できるものと捉えています。活用の可能性としては4つあると思っています。
1つ目に、過疎地など、トラック輸送が非常に非効率で生産性の低い分野に無人で運んで行く、そうした分野での活用。2つ目に、都市でも住宅地や高層のビルなどの高層階への宅配輸送の活用の可能性。3つ目は、災害時の支援物資の輸送。道路が寸断されている場合の輸送には非常に効果的だと思います。4つ目は巨大な倉庫の中での物流の荷捌きの効率化。人手不足ですからドローンは有効な手段です。
去年、総理から、早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能とせよと指示をいただいていますので、安全確保を前提としながらドローンの物流の活用について検討を進めているところです。そのために去年航空法も整備され、安全を確保している事業者は飛行許可が下りるようになって、柔軟に運用できるようになりました。