高値圏にあった原油相場に変調が見られる。米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は4月23日に1バレル当たり66.60ドル、欧州北海産のブレント原油は25日に同75.60ドルと、それぞれ昨年10月以来の高値を付けたが、その後、上値を伸ばせず、足元では下落幅がやや大きくなっている。

 高値の背景には、米政府が昨年11月に再発動したイラン産原油の禁輸について、8ヵ国・地域を適用除外としてきた措置を打ち切ると発表したことがあった。ベネズエラでのさらなる原油生産減少、リビアでの内戦再激化、1月から始まったOPEC(石油輸出国機構)と非OPEC産油国による協調減産など複数の供給減要因も重なった。

 世界景気が減速局面を脱したとの見方が原油需要の増加観測につながったことや、米中貿易協議への楽観的な見方から投資家のリスク志向が強まっていたことなども相場を押し上げた。

 しかし、その後の原油相場は頭打ちだ。4月26日にはトランプ米大統領がOPECに電話をかけて、油価引き下げを求めたと報道された。制裁や内戦による供給障害に対して、産油国が増産で補う可能性も意識されるようになった。

 5月5日にはトランプ大統領がツイッターで、それまで引き上げを延期していた2000億ドル相当の中国製品への追加関税を10日に25%に引き上げることなどを表明し、米中貿易摩擦への懸念が強まったことも弱材料になった。

 その後も、米政府が安全保障上の脅威だとして、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)との取引を原則禁止する方針を示す事態に至り、米中の対立が世界経済の停滞につながるリスクが一段と強く認識された。

 5月23日にIHSマークイットが発表した欧米の製造業PMI(購買担当者景況指数)が市場予想を下回ったことも加わり、投資家のリスク回避姿勢が強まって、原油相場は5%前後の下落を記録した。米国では、ガソリン需要期に入りつつある中でも、原油在庫が増加傾向にあることも下押し材料だ。もっとも、ガソリン在庫は低水準で推移しており、今後、需要増に応じて精製活動が活発になり、原油在庫が減る可能性がある。原油相場は足元でやや軟調だが、目先は底堅い展開が見込まれる。

 その後は、6月下旬か7月上旬に開催が見込まれるOPEC総会などで、産油国がどのような決定をするかが焦点。サウジアラビアが協調減産維持を主張するのに対して、ロシアは減産を取りやめる可能性にも言及している。協調体制にほころびが見られるようだと、供給過剰懸念から原油相場の下落幅が大きくなる可能性もある。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)