
芥田知至
金相場は上昇基調で始まり、4月下旬には1トロイオンス当たり3400ドルを超えて史上最高値を更新した。米トランプ大統領による関税政策の強硬化や中東での軍事的緊張、さらには米財政赤字や利下げ観測といった多様な要因が交錯し、安全資産としての金需要が高まった。だが、今後の金相場は、強弱入り混じる材料の下で一進一退の展開が続くとみられる。

原油相場は、5月以降、米中通商交渉やOPECプラスの増産動向、イスラエル・イラン間の軍事衝突、さらには米国によるイラン核施設への空爆など複数の地政学的・経済的要因を背景に乱高下した。中東の緊張が一時高まる中で原油は急騰したが、停戦報道で一転して急落。当面は60ドル台前半での膠着状態が続きそうだ。

銅相場は2024年に過去最高値を記録し、その後も高値圏で推移してきた。しかし米国の「相互関税」発表を機に、国際市場は大きく動揺。ニューヨーク商品取引所(COMEX)とロンドン金属取引所(LME)の価格差拡大や中国・欧州の景気見通し、ドル相場の変動などが複雑に絡み合い、相場の先行きは読みづらい状況が続いている。

原油相場は2025年4月、米中貿易戦争の激化とOPECプラスの増産加速方針を受けて急落した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)が1バレル=55ドル台に落ち込む場面もあった。相互関税の一時停止や中東の地政学リスクが買い材料となるも、上値は限定的だ。サウジの価格下落容認の姿勢が、下落圧力となっている。

金価格は年明け以降上値を追い、1月末以降最高値更新を重ねている。ウクライナやガザを巡る地政学リスクがくすぶる中、トランプ関税への不透明感が支援材料だった。米国の相互関税発表でも先行きの不透明感は解消されず、金相場への追い風は続きそうだ。

米国の景気鈍化や需要減少懸念から原油相場は足元で下落している。朝令暮改のトランプ政権の関税政策、ガザやウクライナでの停戦交渉など不透明感の材料が多く、相場の先行きは方向感が出にくい展開となりそうだ。

トランプ政権の関税政策は銅相場にも大きく影響する。米国のCOMEX(ニューヨーク商品取引所)の相場には価格上昇圧力がかかる。関税の報復合戦で中国の輸出が減少することは中国の銅消費減少につながり、価格の押し下げ要因となる。

米国の金融政策動向、中東の地政学リスク、中国の景気動向…。強弱の材料が入り交じり、原油価格は一進一退の動きを続けている。今後も、トランプ政権の政策の不透明さもあり、方向感の出にくい相場展開となりそうだ。

米大統領選挙前の先行き不透明感の高まりなどから金相場は10月に史上最高値を更新した。大統領選挙の結果が確定した後は、中国人民銀行をはじめとする公的部門の購入など買い材料と、米国利下げペース鈍化などの売り材料が交錯し、しばらくはもみ合いが続きそうだ。

原油相場は9月以降、横ばい圏で推移している。中東情勢や中国景気など相場を一方向に動かす材料とはなっていない。トランプ氏の大統領復帰によるエネルギー政策変更、中東政策、中国政策などの相場への影響は読み切れない。方向感のない展開が続きそうだ。

銅相場は1万ドル前後の一進一退の動きを続けそうだ。中国による景気刺激策など好材料はすでに織り込み済み。米国の利下げ観測や地政学リスクなど強弱の材料が綱引きをしている状況が続くとみられ、相場が上下に大きく振れることはないだろう。

米国や中国経済の減速傾向は原油相場にとって売り材料。一方で、中東などの地政学リスクの高まりは相場を押し上げる。双方の綱引き状態が続き、今後も原油価格は一進一退の動きとなりそうだ。

金の現物相場は、3~4月に急騰して2400ドル台まで上値を伸ばし、その後、上昇ペースは鈍ったものの、5月、7月に史上最高値を更新した。足元も8月20日に1トロイオンス当たり2531.60ドルを付け、最高値を更新している。今後も二つの買い主体に支えられて上昇基調が続きそうだ。

ウクライナや中東情勢など地政学リスクの高まりもあり、6月上旬に底を付けた原油相場は上昇に転じたが、上値が重い展開が続いている。ドル相場との連動性も薄れ、相場を方向付ける要因が乏しいのが現状である。

銅相場は5月に史上最高値を更新したが、その後は下落した。EV(電気自動車)向けなどに中期的には需要増加が見込めるものの、足元では中国需要の停滞懸念や米金利の高止まり観測が相場の重荷になっている。

イスラエルとハマスの紛争など地政学リスクの高まりを受けて、原油相場は4月に高値を付けたが、その後は値を下げている。OPECプラスは、6月2日に減産継続を決定したものの、相場の反応は鈍い。

3月初旬以降、金相場は最高値更新を繰り返した。中東での紛争激化に伴う地政学リスクの高まりや米国の利下げ観測がその背景にあった。ただ、弱気材料に対する反応が鈍く上昇スピードがやや速すぎた。今後地政学リスクが緩和するような状況になれば、相場は調整する懸念がある。

ロシアとウクライナ、イスラエルとハマスの紛争など地政学リスク、堅調に推移する米国経済、底打ちの気配が見える中国経済。どれも原油相場を押し上げる決定的な材料となっていない。24年後半に米国の利下げが進めばドル安から原油価格には上昇圧力がかかるだろう。

銅相場はしばらくレンジ相場となりそうだ。主要需要国である中国の景気停滞による需要減などが上値を抑える一方、米利下げ観測やEV(電気自動車)向けなど中長期の需要拡大見通しなどが下値を支える。

原油相場はボックス圏の動きを続けている。中東情勢など地政学リスクの高まり、産油国の自主減産という相場の押し上げ材料と中国経済停滞、主要国中央銀行の利上げによる景気減速という下押し材料の綱引きが続いている。
