通商外交の新トレンド、自由貿易・関税に触れずPhoto:Simona Granati - Corbis/gettyimages

【ブリュッセル】米バイデン政権はこの1年、日本や欧州連合(EU)のほか、インドやペルーなど20カ国以上との間で、国境を越えた経済連携に関する協議を開始した。これらの協議では「自由貿易」や「関税」といった用語はほとんど取り上げられない。

 貿易協定の新しい世界へようこそ。関税の大幅な引き下げはもはや議題とはならない。協議の対象は、デジタル著作権や大気の質、技術や製品の基準といったその他の多くの問題だ。しかも本格的な条約ではなく、政府レベルの合意で取り決められることが多い。

 経済や政治における潮流の変化によって、自由貿易協定(FTA)の質が変わってきた。サービスと電子商取引の台頭により、物理的な商品が世界の貿易において果たす役割は相対的に小さくなっている。富裕国と低所得国の賃金や生産コスト面での格差は縮小しており、環境規制のような間接コストに関心が移っている。また、グローバル化がもたらす経済的な混乱により、多くの政治家は旧来型の自由貿易を重要視しなくなっている。