「麻布→東大卒」でありながら「プロゲーマー」という経歴が、世間の話題となったときどさん。しかし順風満帆だった彼のプロゲーマー人生は、ゲーマー20年目の2013年ごろに壁にぶつかった。格闘ゲームのeスポーツ化による環境の変化によって、全く勝てなくなったのだ。
2冊目の著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』では、そのV字回復の軌跡を紹介しながら、ときどさんが毎日やっている「努力のやり方」を紹介している。「圧倒的に変化が激しい」eスポーツの世界で戦うために、必要なこととは何か。

今回は、学生なら受験や就職面接、社会人ならプレゼンなど、「本番」と言われる場面で力を発揮するコツについて語ってもらった。(文/山本奈緒子)

受験、面接、プレゼン…「有能なのに、ここ一番で結果が出ない」人に足りない視点

「本番に弱い」は事前準備が足りない人の言い訳

 僕はプロゲーマーの中でも、本番に強い方だと思います。ざっくりのイメージですが、ライバルであるプロゲーマーたちと練習でプレイしているときの勝率が約55%。一方大会での勝率は約57%。わずか2%と思われるかもしれませんが、実はこの差が大会の成績を大きく変えるのです。

 では本番でプレッシャーに負けずにいつも通りの動きをするにはどうしたらいいのか? 結論を述べると、僕は結局「事前準備」に尽きると感じています。

 ゲームの試合は1分、1秒、さらに言えば60分の1秒(1フレーム)で勝負が決まってしまいます。こういう状況で大切になってくるのは「その場の決断を早くする」ことです。そうしないと、ちょっとした「迷い」を相手に突かれてしまうんですね。

 ビジネスのシーンだと、たとえばプレゼンや会議での発言などは瞬時の判断が求められる場面なので、僕らの試合に似ているかもしれません。

 決断を早くするために有効なのが、やることを全部、事前に決めておくことです。

 僕は、試合に臨むときに
「開幕戦であの相手と当たった場合はこう攻めよう」
「画面の端に追い詰められたときはこう対応しよう」
というふうに、ゲームの中でやることを事前に全部決めて試合に臨んでいます。強いプレイヤーを見てきて、そういうやり方をする人たちが多いなと感じたからです。