インフレPhoto:123RF

 米国で物価が上昇し始めた。4月の消費者物価指数(CPI)は前年比+4.2%、PCE(個人消費支出)デフレーターも同+3.6%の上昇と、いずれも2006年以来の高さとなった。このため市場では、FRB(連邦準備制度理事会)が早期にテーパリング(資産購入の縮小)に踏み切るのではないかとの見方が強まった。ビットコインは大きく下落するなど、これをリスクオン相場の終焉を告げる前兆と見る向きも市場では少なくない。

 しかしパウエルFRB議長は、「物価上昇は一時的」として、拙速な政策変更には慎重姿勢を保っている。確かに今はコロナ禍からの復興途中であり、注目の雇用統計も4~5月と2カ月連続して事前予想を下回っている。物価のみならず景気にも配慮しなければならないパウエル議長の立場を考えれば、足下で物価が上昇しているとは言え、景気の腰を折るような政策変更は慎重に進めたいのが本音ではなかろうか。

 果たしてFRBは、どこまでなら物価上昇を許容できるのか。教科書的な回答は「長期的な期待インフレ率が2%に留め置かれる限り」であろうが、それではあまりに抽象的だ。そこで本稿では、筆者の独断と偏見を交えて、具体的なFRBのインフレ許容ラインを推測してみたい。