ルーブルとドルルーブルは、欧米による対露経済制裁が意識され、クリミア併合時よりも下落幅が大きくなるリスクがある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 ロシアがウクライナ国境に10万人規模の兵力を集結させたことで、ウクライナ情勢が緊迫化している。ロシアと欧米諸国の間で交渉が続けられているが、合意の兆しは見られていない。ウクライナ情勢の為替市場に与える影響を考える上で、まずウクライナ情勢を巡る状況を整理しておこう。

 重要なことは、長期的に見て、ロシアは旧ソ連領土の再取得への野望を抱いている可能性が高いということだ。

 08年8月のグルジア・南オセチア自治州侵攻、14年3月のクリミア併合とそれに続くウクライナ東部ドネツク州、ルガンスク州の親露勢力への独立支援など方法こそ異なるとはいえ、何らかのきっかけがあると、ロシア軍が旧ソ連領土に侵攻している。このことは、ロシアの野望を明らかにしているといえよう。

ロシアと欧米諸国の交渉
短期間での交渉妥結は期待薄

 ロシアがウクライナ国境付近に兵力を増強した背景には、ウクライナのNATO加盟方針を含むNATOの東方拡大に向けた動きがある。NATO東方拡大は、ロシアの「レッドライン」(越えてはならない一線)と言えるものだが、NATOおよびウクライナが、NATO東方拡大の動きを断念する可能性は低いだろう。

 ロシアは昨年12月17日、NATOと米国に対し、ウクライナのNATO加盟拒否を含む東方拡大停止や、欧州における軍配備をNATOの東方拡大前の97年までの状態に戻すことなどを求める一方的な合意案を提示した。しかし米国は、ロシア側のこうした要求に対し拒否姿勢を示したとされている。