
山本雅文
2025年も半ばを迎え、為替市場は再びドルと円の綱引きを巡って揺れ動いている。第2四半期は米国発のスタグフレーション懸念や財政悪化への不安、さらにはFRBの利下げ観測が強まり、ドルは全面安の様相を呈した。本稿では第3四半期のドル・円相場の行方を見通すべく、再燃する米利下げ観測、トランプ関税の行方、市場心理や地政学的な動きまで含めて論理的に検証していく。

日本の長期金利は高止まりする一方で、円相場はむしろ軟調に推移しており、金利上昇が円高に結びつかない異例の状況が続いている中、7月に控える参院選がその分水嶺となる可能性が高まっている。注目されるのは、選挙結果がもたらす政権運営の変化と、それに対する金融市場のダイナミックな反応である。本稿では、参院選後の政治構図と市場の反応を連立与党が過半数を維持する場合の穏やかな円高シナリオから、首相交代や野党連立による「日本売り」シナリオまで、5つのシナリオに分類し、円相場・金利・株式市場に与えるインプリケーションを分析する。

米中間の通商摩擦が一段落しつつあるなか、日米間の協議は停滞感を否めない状況にある。かつて最優先とされた日本と韓国が後回しにされ、先に通商合意を果たしたのはまさかの英国と中国。通商合意の余波は関税にとどまらず、アジア通貨の為替動向にも広がっている。台湾ドルや韓国ウォンの上昇、そして日本円の思惑的上昇は一見無関係に見えて、実は米国との通商交渉を通じた為替政策との連動を示唆する重要な兆候でもある。台湾・韓国が事実上、通貨高を通商カードとして用いている中で、日本も同様の圧力を受ける可能性があるのか。今後の通商交渉の行方、そして円相場に対する潜在的影響を占ううえで円相場に何が織り込まれていくのか、そのインプリケーションを読み解く。

4月以降の為替市場は、トランプ政権の高率関税政策、主要国の金融政策の分岐、そしてウクライナ停戦の可能性という三つの焦点によって、ドル安・円高の展開が意識され始めている。特に、米国経済にスタグフレーションの兆しが見られる中での相互関税導入は、株・債券・通貨の「トリプル安」懸念を呼び起こし、ドルに対する信認低下を招いている。これに対し、日本では日銀の利上げ継続と政府による円高誘導の可能性が重なり、円が相対的に強含むとの見方が広がっている。関税政策と金融スタンスのずれがもたらす通貨間の相対的力学、ウクライナ停戦と欧州通貨への波及効果を点検しつつ、ドル円・ユーロドルなど主要通貨ペアの行方を多角的に展望する。

トランプ政権が発足し、関税強化や保護主義的政策が次々と打ち出される中、市場では「プラザ合意2.0」とも呼ばれるドル安誘導策の可能性が囁かれている。1985年のプラザ合意と類似した状況として、米国の経常赤字の拡大や実質実効為替レートの高止まりが指摘されていることが背景にある。トランプ政権のドル安誘導の可能性について、多角的な視点から分析し、その実現性と市場への影響を検証するとともに、米国の財政赤字や利下げの必要性、貿易赤字削減の実効性など、ドル安政策の真の課題に迫る。

トランプ政権の経済政策は、減税や関税引き上げといったドル高要因と、関税による景気減速やエネルギー価格抑制といったドル安要因が混在している。市場はこれまでドル高材料のみを織り込んでいたが、ドル安要因が意識されるにつれ、ドルロングの巻き戻しが進む可能性がある。さらに、FRBが利下げを進める一方で、日銀が淡々と利上げを続けることで、日米金利差は縮小し、ドル円の下落基調が継続する展開が想定される。ドル円相場の先行きを今年だけでなく2026年以降も展望し、FRBの利下げが続く中でのドル安傾向、日本の金融政策の影響、さらには2028年の米大統領選に向けた政治要因がどのように為替市場に作用するかを分析する。長期的な視点からドル円のトレンドを捉え、今後の市場環境を整理する。

ドル円相場は2024年10月以降、ドル高円安が続いているが、その背景にはトランプ・トレードや日米の金融政策決定会合の影響、さらには英ポンドやユーロの下落など多様なテーマが交錯している。本稿では、そうした為替動向に加え、米国市場に潜む“3つの過剰”に焦点を当て、今後のドル円相場をどのように左右するのかを探る。

2025年の主要通貨市場は、トランプ次期米大統領の政策など世界経済と国際政治の動向に大きく左右されそうだ。トランプ氏の政策や各国中央銀行の金融政策の違い、日欧の政局不安などを考察し、ドルや円などの為替市場にどのような影響をもたらすか詳しく分析する。

米大統領選の開票速報が流れ始めると、米株価指数先物、米10年金利の上昇と共にドルが全般的に上昇。いわゆるトランプ・トレードだ。上院選、下院選ともに共和党優勢との見方から、市場は「レッドスウィープ」(共和党が大統領職、上下両院の過半数議席を全て確保)実現の確率が高まったと捉えたようだ。レッドスウィープ確定後もドルは買われ続けるかを検証し、米利下げ継続と日銀利上げを受けたドル円の行方を展望する。

石破新首相は、自民党総裁選前の発言を一転させ、解散総選挙の日程や、金融政策、原発政策などにおいて従来の主張を曲げていると捉えられかねない「柔軟性」を示している。こうした柔軟性は、総選挙だけでなく円相場に対しても諸刃の剣となりかねない。過去の石破首相の著作・発言と所信表明演説、そして最新の自民党政策パンフレットを踏まえ、石破新内閣の諸政策の円相場へのインプリケーションを考える。

ドル円は7月3日に付けた162円ちょうど近辺をピークに、一時141円台後半へと下落。FRBの利下げ開始時期が9月となる可能性が高まる一方で、日銀は7月に予想外の利上げを決めたことが響いた。ただ一方で、円売り巻き戻しの動きは一巡し、ドル円は今後再び上昇傾向を続けるとの見方も残っている。日本を代表する為替ストラテジストが自身のドル円予想を下方修正したことを明かすとともに、短期・長期それぞれでみたドル円見通しを大胆に披露する。

ドル円は7月25日に一時152円割れと直近のピークから6%超の下落となった。ユーロ円や豪ドル円などクロス円の下落も目立っており円買いの動きが強まったといえる。現時点で想定される複数の円買い要因を整理し、過去2度見られた円買いの動きと違い、今回の円買いが持続性のある「3度目の正直」となるかを検証する。

日本当局による円買い介入があったにもかかわらずドル円はじり高の動きを続けており、ドル円が200円に達するといった見方も示されるようになってきた。円安が続く根拠として指摘される円キャリー取引、貿易赤字、資本逃避など5つのポイントを経済指標などから冷静に検証し、足元のドル円上昇が指摘される根拠と連動していない点や、円が買い戻されるリスクがあることを指摘する。

日銀が4月の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決めた後、ドル円は160円超えを記録。日本当局はようやく円買い介入に踏み切ったようだが、2022年9月の円安局面時に比べ円買い介入開始が遅かった印象もある。22年9月と今回との違いを整理し、なぜ日本当局の円買い介入が市場の期待よりも遅かったかを解説するとともに、いずれ限界を迎えるであろう円買い介入に代わる「真の円安対策」のあり方を論ずる。

米インフレ圧力は高止まりしており、市場では米FRBによる利下げが遅れるとの見方が強まっている。一方で欧州などはインフレ鈍化を受けて利下げ開始の機運が高まっている。このままだと先進国で利下げ開始が最後になるのが米国となるかもしれない。為替相場を長年ウォッチしてきた為替ストラテジストがグローバルの視点でインフレ・景気状況をもとに相場見通しを披露するとともに、ドル円が160円に達する展開や日本当局による円買い介入の可能性について解説する。

3月の日銀・金融政策決定会合を控え、市場ではマイナス金利解除が3月に決まるとの期待感が高まっている。日銀からのリーク化のような観測報道が数多く出され、日本の経済指標も好調だ。春闘の状況などから市場の期待通りに3月のマイナス金利解除があるかを展望し、マイナス金利解除後の日銀が取りうるアクションを指摘し、マイナス金利解除後にドル円が150円に逆戻りする可能性を検討する。

日本の金融市場では株高と円安が同時に起こりやすい。しかし世界を見渡すと、株高と通貨高が同時に起こりやすい国も多い。株高と通貨高が同時に起きる国の条件を整理することで日本が株高と通貨安の関係にある「例外的な」存在であることを明らかにするとともに、日銀のゼロ金利解除で円高でも株高となる可能性を過去の事例から検証する。

23年の新興国通貨はメキシコペソ、ポーランドズロチ、ブラジルレアルなどが米金利上昇にもかかわらず対ドルで上昇した。24年は米国で利下げが見込まれる一方で中国景気の減速懸念が強いままで、多くの新興国で重要な選挙も予定されているなど、新興国通貨の先行き不透明感は高い。23年における新興国のファンダメンタルズを確認するとともに、24年に想定されるリスク要因をもとに24年の新興国通貨見通しを提示する。

今年(23年)はドル高が目立ったように思われるが、ドルの上昇率は中の下程度であり、最も上昇したのはフラン、ポンド、ユーロなど欧州通貨で、円とノルウェークローナが最も弱かった。24年の主要通貨を巡る焦点は、各国でインフレが鈍化する中での政策金利の引き下げ開始タイミングと指摘する為替ストラテジストが、24年の景気、インフレ、選挙などのイベントを見通し、主要通貨のメインシナリオとリスクシナリオを大胆に提示する。

ロシアによるウクライナ侵攻で始まったウクライナ戦争は当初の予想に反し長期化している。ただ、現在と今後の国際情勢の変化を踏まえると、ウクライナは戦闘を継続することが困難となる可能性が高まっており、停戦機運が従来よりも高まっている。ウクライナ戦争が妥協的な和平で終わる可能性が高いことを指摘するとともに、終戦/停戦/休戦となった場合の市場の反応を占う。
