日本株の投資環境「好転」の2022年、欧州・新興国株より注目を集める3つの理由Photo:PIXTA

グローバル化の時代が終わり、労働コストが上昇し、成長がインフレ率と金利を上昇させ、好況と不況を繰り返す経済サイクルが戻ってくる。市場は、経験したことのない環境に不安を感じている。その状況下で新興国株や欧州株より投資家の注目を集めるのは日本株である。(クレディ・スイス証券株式会社 プライベート・バンキング チーフ・インベストメント・オフィサー・ジャパン〈日本最高投資責任者〉 松本聡一郎)

「大いなる転換」がもたらす
高成長・インフレ率上昇・金利上昇の世界

 初めての経験は、何であれ緊張するものだ。お化け屋敷やジェットコースターなど、初めて経験したときのドキドキを超えるものはめったにめぐってこない。経験から得た知見は、これから起こり得ることへの緊張を和らげてくれる。たとえ予想通りにいかずとも、経験があるとより冷静に対処できると考えるようである。

 クレディ・スイスは、2022年を「大いなる転換」の年と位置付けている。東西冷戦が終結し経済のグローバル化がスタートした時から30年、マーケットは経済の高成長、高債務と低インフレ、金利低下が同居する環境で過ごしてきた。22年はこの環境が大きく転換し、高成長がインフレ率上昇をもたらし、金利上昇と債務抑制に向かい、経済サイクルは再び好況と不況を繰り返すことになると考えている。

 この転換の主な要因は、主要国での労働人口の減少による働き手の不足と消費地に近く安全保障上のリスクの小さい拠点に生産や調達拠点を移すサプライチェーンの見直し(=ニアショアリング)が進んでいくことである。

 グローバル化の時代は、良質で安価な労働力を求めて生産拠点を移管し、コスト上昇を抑制しながら供給力拡大を達成できていた。しかし、パンデミックでグローバルに張り巡らされたサプライチェーンのひっ迫を経験し、また民主主義と権威主義の対立が深まり世界が多極主義にシフトしたことが、主要国での国内格差解消の政治的圧力の高まりと合わせて、労働コストの上昇をもたらしている。

 世界経済を取り巻く環境は大きく転換し始めているのだ。

 グローバル化の時代が30年続いたことで、市場参加者の大半にとって、グローバル化以前の経済メカニズムは、知ってはいるが経験したことがないものとなっている。