
松本聡一郎
2023年の上半期、米国の主要な株価指数の上昇率はいずれも二桁台。しかし、指数毎の上昇率には大きなばらつきがあった。少数の超大型テック株が占める比率が大きい指数ほど上昇率が高くなった。超大型テック株の上昇の前提には過度の成長期待がある。そうした株への投資には慎重になるべきだ。

グローバル化から多極化へのシフトと少子高齢化の進展と人口減少。この2つのトレンドは長期投資を考える上での示唆を与えてくれる。この2つのトレンドから切り取った6つの長期投資テーマを解説する。それぞれ株式市場における性格が異なるため、リスク分散にも寄与する。

インフレ抑制のために1年余りで5%という急速な利上げを続けてきたFRB(米連邦準備制度理事会)。今後も、インフレ抑制の手綱を緩めることはないだろう。大幅な金融引き締めはいずれ景気後退をもたらす。マーケットは先走りがちだが、今回も利上げ停止、景気後退、リスク資産の買いのタイミングの順序は変わらないだろう。

米国に端を発した金融不安にもかかわらずFRB(米連邦準備制度理事会)は、インフレ圧力が抑制されるまで金融引き締めを継続するだろう。先進国の人口減少も賃上げ圧力を高止まりさせる。人口減などを補い生産性を向上させることに資するテクノロジー株の有望さは変わらないが、今はいったん低リスクの債券で資金を運用し、次なる投資のタイミングに備えるべきだろう。

グローバルな経済や政治が大いなる転機を迎えている今、資産運用において、リスク分散の重要性が一段と増している。長期的な資産価値保全のために、広く分散された投資ポートフォリオを構築する必要がある理由を解説した。

2023年、株価は好調なスタートを切った。しかし、米国のインフレと政策金利の見通し、企業業績、株価のバリュエーションの動きを子細に分析すると、好調の株価を支えている根拠は危うい。株価の先行きは慎重に見ざるを得ない。

主要国の中央銀行の利上げでインフレはピークアウトしつつある。しかし、サプライチェーンの見直しや人手不足の長期化による供給制約でインフレが再燃しやすい状況が続き、高めの金利が維持される。今後は、ディスインフレ時代の投資ルールをリセットする必要がある。

2022年は「大いなる転換」の年だった。グローバル化の時代は終焉を迎え、今後、世界では分断が進む。デジタル化に出遅れ、国内への投資を怠り、競争に劣位してきた日本企業だが、これまでため込んだ資本を活用すれば新たなチャンスをつかむことができるはずだ。

米国の10月の消費者物価上昇率が市場予想を下回ったことで市場はリスクオンの様相を見せているが、局面転換とみるのはまだ早い。それどころが、市場は今後の企業業績下方修正を織り込んでいない。加えて、インフレ体質定着は適正なPER水準を低下させる。株価の上昇余地は限定的だ。

エネルギー・食料価格の上昇、サプライチェーンの混乱といった足元のインフレ要因はいずれ解消する。しかし、現在起きている世界経済の構造変化は、今後長期間にわたり物価を押し上げていくだろう。インフレ圧力を高めている要因を解説するとともに、その構造変化において注目すべき長期の投資テーマを取り上げる。

ディスインフレをもたらしたグローバル化の時代は終わった。サプライチェーンの見直し、長期的な人口減少による労働不足などでインフレ時代への転換が進む。そのディスインフレからインフレへの変化が資産運用にもたらす変化について解説していく。

インフレにピークアウトの兆候が見えつつあるが、コロナ前のようなディスインフレ状態の回復は望めないだろう。民主主義国と権威主義国の対立によるサプライチェーン見直しもあり、企業にとってコスト高は常態化する。そうした状況下で、株式市場が企業を評価する基準を解説する。

アベノミクスは市場からの日本の評価を支えてきた。人口減少、高水準の公的債務、地政学リスクにうまく対応してきたとみられている。安倍元首相亡き後、市場が日本を評価・分析する上での3つのポイントを明らかにする。

グローバル化を背景としたディスインフレの時代は終わり、さまざまな供給制約の下でのインフレの時代が到来する。こうした構造変化が進む過程でこそイノベーションをもたらす企業は生まれる。そのために必要な社会の条件は何かを解き明かす。

食品などの値上げが相次いでいる。サプライチェーンの先進国への回帰、労働者への分配強化などもあり、日本においてもインフレが定着し、これまでのデフレ思考がインフレ思考へと転換する公算が大きい。それは日本株に対しても大きな変化をもたらすだろう。

米国では急速な金融引き締めを受けて株価のバリュエーションが低下し、株価も下落した。しかし、すでに妥当な水準にまで低下しており、堅調な企業業績を背景に反転に向かうだろう。一方、日本では企業の価格転嫁が進まず経済の先行きは不透明。こうした状況下で上昇が期待できる企業はどこかを分析する。

民主主義と権威主義の対立は続く。世界経済の分断が進み、インフレ率が上昇する一方、社会保障や安全保障のコストが上昇し、財政は悪化するだろう。こうした動きが長期の投資戦略に与える変化を検証する。

ロシアのウクライナ侵攻で世界秩序は転換した。コストの増加、インフレの高止まりが常態化する。新しい世界秩序の下ではこれまでとは違う長期投資戦略が求められる。その3つのポイントを解説する。

グローバル化の時代が終わり、労働コストが上昇し、成長がインフレ率と金利を上昇させ、好況と不況を繰り返す経済サイクルが戻ってくる。市場は、経験したことのない環境に不安を感じている。その状況下で新興国株や欧州株より投資家の注目を集めるのは日本株である。

新型コロナウイルスの感染拡大で世界の債務は膨張した。供給制約や少子高齢化による人手不足でインフレ率が上昇しつつある今、債務の膨張と低金利を両立させることが困難になりつつある。それは、債務の持続可能性が担保されなくなること意味する。持続性維持のためには成長率向上が不可欠だが、そのための条件を日本経済は満たしているのだろうか。
