「FIRE」したいあなたに忍び寄る危険なワナ

コロナ禍の時代が長く続き、世の中では「投資ブーム」が起こっているそうです。確かに日本の経済はいつになっても良くならないし、会社のお給料もなかなか増えないし、「老後2000万円問題」とやらも気になるし、今のうちに何かはじめなきゃ、と思っている人は多いはず。でもじゃあ、一体何からはじめればいいのか? すぐにはわかりませんよね。知識もないのに飛び込んで、だまされるのも嫌だし…。そんなあなたに頼もしい助っ人が現れました。「セカニチ」のハンドルネームで活躍中の実業家・南 祐貴さんです。初の著書である『世界一面白くてお金になる経済講座 知識ゼロからはじめる投資のコツ』(ダイヤモンド社)で、誰にでもできる最も簡単で最も安全確実な投資法を説き、話題を集めています。彼が説く、世界一「安全確実」にお金持ちになる方法とは?(イラスト/ゆん)

あなたの「資産が奪われています」と聞いたらどう思いますか?

あなたは警察や弁護士の所に駆け込むでしょうか。それとも途方に暮れて泣き寝入りをするでしょうか。悲しい現実ですが、庶民が永遠にお金持ちになれないのは長い人生を生きていく中で数々の人にだまされて、資産を奪われているからです。大切な資産をあなた自身の手で、他人に差し出しているのです。お金持ちになるチャンスは全員の足元に落ちているのに、自分の意思で踏みつけてダメにしているのですよ。

ここ数年でFIREという言葉が独り歩きしています。FIREとは経済的独立と早期退職を目標とするライフスタイルのことを指します(Financial Independence, Retire Early movementの頭文字)。リタイアアーリーとは、文字通り「早期に退職する」という意味。日本の場合、現状では定年65歳が一般的なリタイアのタイミングとなりますが、その時期を待たずに引退することを目指す言葉です。FIREに憧れを持ったあなたに、例えば「株の譲渡益や配当金で生活するために生活費を削りましょう(支出面)」「年に4%の資産を切り崩す生活を計算しましょう。これが4%ルールです(収入面)」と、YouTuberやセミナー講師は教えてくれるでしょう。

日本のFIREの流行は非常に危険な状態です。なぜなら詐欺の手口として悪用されるからです。欲をかくとFIREに釣られてだまされ、大損することでしょう。残念ながら我が日本国にも悪人はたくさんいます。近年、若者から高齢者まであらゆる世代が標的にされている投資詐欺が急増しています。

金融商品取引法違反(無登録営業)でジュビリーエース関係者7人が逮捕されました。「アービトラージ(裁定取引)で必ず儲かる」「最大月利20%の配当を約束する」「新規会員を集めると10%の紹介料を出す」と、仮想通貨に投資する名目で650億円を集め“マルチのカリスマ”と呼ばれていました。セミナー参加者は講師のスマホ画面を見せられ、その場で利益が積み上がっていく様子を信じ込んで詐欺の口座に入金したようです(自分の意思で…)。お金は全て持ち逃げされ、残高はゼロになりました。

似たような手口では仮想通貨を“AI運用”する投資詐欺グループの元幹部ら4人が逮捕されました。「人工知能を使って仮想通貨で高い配当金を得られる」などと謳い、北海道から沖縄まで全国の約1万5000人が被害に遭いました。勧誘セミナーで講師は「4ヶ月で2.5倍になる」「やらない人は弱者」と参加者を煽ったそうです。50代女性は280万円(退職金)を投資し、15万円が返金されただけ。70代女性は140万円(老後の生活資金)を投資し、4万円が返金されただけで、二度とお金は戻りませんでした。

実はあなたの親世代も狙われています。もし大切なご両親が同じ被害に遭ったらどうしますか? このような悪質な詐欺を許せますか? ここで挙げたのはほんの一例で、他にも大量の詐欺グループがいます。そもそも《FIRE》《高配当》《配当金生活》という言葉が、なぜ存在しているのでしょう。それは、素人のカモを釣るためです。

世の中には《釣る側》《釣られる側》の2種類の人間しかいません。毎月のエサをぶら下げると簡単に人を錯覚させることができます。お金に困っている人ほど、来月の生活しか考えられません。だから素人の情報弱者を釣るには《高配当》《月利◎%》というすぐに儲かりそうな魔法の言葉が一番効果的なのです。20~30年という長期的な視点で自分の人生を考えられないと大損をするのです。

早期リタイアを表すFIREという言葉はなぜ使われるのでしょうか。それは《憧れ》を作り出すため。FIREしている人=すごい人と、信者にさせるための釣り言葉なのです。信者にさせた後は簡単。自分の利益となる有料オンラインサロン・アフィリエイト・ポイントサイトに誘導します。「儲ける」という漢字には「信者」が使われていますね。心が弱い人はいつの時代もカモにされます。またの名を「養分」とも言います。骨の髄までオンラインサロンのオーナーにしゃぶりつくされるのです。

南 祐貴(みなみゆうき・セカニチ)
「FIRE」したいあなたに忍び寄る危険なワナ

Koru-workers株式会社 代表取締役。
1989年東京都調布市生まれ。2012年に大手広告代理店に入社、約6年勤めて、自由になるため退職・起業。クラウドファンディングなどで資金を集めて高輪ゲートウェイ駅近くに宿泊施設「Koru Takanawa Gateway」をオープン。同時に、経済や投資をわかりやすく解説する「#世界最速で日経新聞を解説する男(セカニチ)」を開始。生放送コミュニティ・オンライン学習サービスの「Schoo」では、国内最大級6200本の授業から「ベスト授業&ベスト先生」の2冠に輝く。本書が初の著書。各SNSで毎日情報発信。インスタグラムのフォロワーは2万人以上。『世界一面白くてお金になる経済講座』が初の著書。