人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』は出版後、すぐに重版が決まり、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せるなど、話題になっています。(初出:2021年11月7日)
「サプリメントは本当に効くのか?」という質問もよくいただきます。
さまざまな研究がされていますが、それらをまとめ、24のサプリメントの健康への影響を評価した論文では、「ほとんどのサプリメントは飲んでも飲まなくても健康への影響はあまりなかった」という結果が出ています(※1)
カルシウムとビタミンDの合剤に限って言えば「脳卒中のリスクを上げる」という結果も出ており、ジョンズ・ホプキンス大学の医師がまとめた論文では、ビタミンEを多量に摂取する習慣のある人で死亡率が上昇したという報告があります(※2)
栄養について熱心に勉強し、「ビタミンCは抗酸化作用があり、活性酸素を抑制する」などの知識をお持ちの人はこの結果に釈然としないかもしれません。
サプリメントが効かない理由
知っておいてほしいのは、「現代の医学では、成分ごとに何が体によいのか悪いのかが、細かくは解明されていない」という事実です。
サプリメントのように成分ごとに抽出されたものを摂取しても健康効果は表れないのですが、例えばナッツ、コーヒー、ヨーグルトといった食品に関しての研究では、その健康への「差」は明確に表れます。
「野菜が体によい」「果物が体によい」という論文は数多く出ているものの、医学的に「なぜよいのか」をこと細かに語れる段階ではないのです。成分を過信しないほうがいいですし、そして現代の医学をあまり過信しないほうがよいと考えます。
ビタミンのサプリメントを「なんとなく体によさそうだから」という理由で摂取するよりも、地道に野菜や果物を摂取するほうが費用対効果は高いといえるでしょう。