世界投資へのパスポート
【第436回】 2016年9月19日公開(2016年9月23日更新)
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「世界投資へのパスポート」

著者・コラム紹介

世界投資へのパスポート

広瀬隆雄 ひろせ・たかお
三洋証券、S.G.ウォーバーグ証券(現UBS証券)、ハンブレクト&クィスト証券(現J.P.モルガン証券)を経て、2003年、投資顧問会社・コンテクスチュアル・インベストメンツLLCを設立。長年、外国株式関連業務に携わっており、特にBRICsをはじめとした新興国市場に詳しい。米国カリフォルニア州在住。

広瀬 隆雄

2年に及ぶ原油価格の下落でふるい落とされた
シェール企業の中で生き残った3社を紹介!
各社の今後の業績と直近1年の株価の見通しは?

「最後まで生き残った者は強い」
シェール業界では振るい落としが完了した

 「試練は我々を強靭にする(That which does not kill us, makes us stronger.)」という諺(ことわざ)があります。

 2014年の夏以降、シェール開発がもたらした原油の供給過剰で、原油価格は100ドルを超える水準から一時30ドルを割り込む水準まで下落しました。

 シェール開発では、地中の奥深くの岩盤に閉じ込められた原油や天然ガスを生産する関係で、採掘コストが高いです。このため「原油価格が50ドルを割れたら、シェール企業は次々に倒産するだろう」と言われてきました。

 しかし実際に原油価格が下げ始めると、各社は中途半端な規模で、なおかつ旧式なリグを休止し、効率の良い大型のハイテクリグを、最もロー・コストで生産できる油田に投入することで生産コストの低減を実現しました。

 下のグラフで青は北米の原油井の数を示しています。ピークの1600本を超える水準から、現在は400本前後にまで数が減り、「振るい落とし」が完了したことを伺わせます。

 この結果、コスト高で採算性の悪いバーケンやイーグルフォードなどの地域ではリグの休止と労働者の失業が多発しましたが、コスト競争力に勝る地域は、最後まで生き残りました。その最後まで生き残った地域が西テキサスにあるパーミアン・ベイシンと呼ばれる生産地域です。

 今日は、最後までサバイバルし、これまでより強靭にスケールアップしたパーミアン・ベイシンを中心に操業しているシェール銘柄を紹介します。

西テキサス、パーミアン・ベイシンでは
現在178本のリグが稼働中

 パーミアン・ベイシンはテキサスの一番西、ニューメキシコ州との州境に近い地域にあります。南はメキシコとの国境に挟まれています。この生産地域の中心にある町はミッドランドと呼ばれる人口12万人の田舎町です。

 現在、パーミアン・ベイシンでは全部で187本のリグが稼働しています。同地域での業者別生産高は下のようになっています。

 なお上のチャートは生産高の多い順から並べてありますが、その中にはシェブロン(ティッカーシンボル:CVX)エクソン・モービル(ティッカーシンボル:XOM)のような世界に展開している大企業もあります。それらの企業にとってパーミアンは微々たる存在ですので、同地域での活動が株価に与える影響は小さいです。

 その反面、このチャートに出てこない中小型株でも、後に紹介するパースリー・エナジー(ティッカーシンボル:PE)ダイヤモンドバック・エナジー(ティッカーシンボル:FANG)のように業容を拡大している企業は存在します。

【パースリー・エナジー(PE)】
いまもっとも急成長しているシェール企業

パースリー・エナジー(ティッカーシンボル:PE)は2008年に創業された若いシェール企業です。同社を創業したのはブライアン・シェフィールドで、彼のお父さんはパイオニア・ナチュラル・リソーセズ(ティッカーシンボル:PXD)のCEOです。

 パースリー・エナジーは新規株式公開(IPO)以来、平均して毎期+16%のペースで生産高を増やしてきました。つまり今、最も急成長しているシェール企業というわけです。

 同社の生産高のうち6割が原油で4割が天然ガスとなっています。水平掘りが出来る大型リグ4基を現在稼働中ですが、2017年にはこれを5~7基に持って行く計画です。大型リグを1基増やすごとに全社生産高は年間+30%成長できると同社では試算しています。

 パースリー・エナジーのバランスシートは強固で、純負債対EBITDA(利払い・税払い・償却前利益)比率は1.7倍です。

 目標株価としては向こう1年で55ドルを想定しています(9/16時点で32.97ドル)。

【ダイヤモンドバック・エナジー(FANG)】
健全なバランスシートと魅力的な含み資産

ダイヤモンドバック・エナジー(ティッカーシンボル:FANG)はパーミアン・ベイシンに8万4000エーカーの鉱区を持っており確認埋蔵量は1.57億バレルです

 同社は健全なバランスシートをしており、これを背景に積極的に鉱区を買収しています。7月も南パーミアンの鉱区を5.6億ドルで買収しました。投資家は同社の含み資産が魅力的であることをよく心得ているので、この買収に合わせて発表された550万株の公募増資も難なく売り切れました。

 同社は原油価格の動向をにらみながら試掘を行っています。現在、20か所の試掘で原油が確認されていますが、それらを生産体制にもってゆくには抗井仕上げ(コンプリーション)と呼ばれる段取りをする必要があります。普通、石油の探索生産の際にかかる費用は、試掘が4割、抗井仕上げが6割ですので、試掘して「原油が出る」ということが確認されても、原油価格が低迷している間は生産に移らず、原油価格が戻って来るかどうか「様子見」します。

 ダイヤモンドバック・エナジーの場合、原油価格が50ドルを超えてきたら、これらの待機している油井の生産にとりかかる予定です。

 目標株価としては向こう1年で115ドルあたりを想定しています(9/16時点で89.69ドル)。

【アパッチ(APA)】
20億バレルの油田を発見し注目を浴びている

アパッチ(ティッカーシンボル:APA)は、今、最も話題を提供しているシェール企業だと思います。その理由はパーミアン・ベイシンに隣接するアルパイン・ハイという地域で、少なくとも20億バレルの油田を発見したと発表したからです。この地域はこれまで「粘土層のため生産が難しい」として地質学者から敬遠されてきた場所です。その関係でアパッチは45万エーカーという広大な鉱区を破格の安値で取得することが出来ました。

 アルパイン・ハイは未だパイプラインなどのインフラストラクチャが整備されていないため、実際の生産は数年先になると思われます。

 同社はこれまでエジプト、メキシコ湾、北海など、世界的に事業展開してきましたが、今後はパーミアン・ベイシンならびに「アルパイン・ハイ」に経営の軸足を移してゆくと思われます。

 目標株価としては向こう1年で80ドルあたりを想定しています(9/16時点で58.56ドル)。

【まとめ】
原油価格が横ばい、もしくは上昇で攻めに転じる3社

 2年間におよぶ原油価格の下落局面で生産コストの高いシェール企業は守りの経営を強いられ、ウォーレン・バフェットの言葉を借りれば「潮が引くと誰が裸で泳いでいるかわかる」状態になりました。今日紹介した3銘柄は、パーミアン・ベイシンという最も競争力のある油田に特化したことで生き残ることができました。

 今後、原油価格が横ばい、もしくは高くなるというシナリオでは、これらの企業は「攻め」に転じることができると思います。
 

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