通常国会が開会、菅直人首相の施政方針演説を聴いた。
内容は今までの発言をパッケージしたもので新味には乏しい。気になったのは、首相の沈痛な面持ち。演説全体が切羽詰った悲鳴のように聞こえた。
演説で首相は「ムダ使いの排除」も強調したが、これは参院選で示された「増税の前にやることがある」という世論を意識したのだろう。しかし、その具体策は何も提示されず、早口で通り過ぎた。昨年1月の「逆立ちしても鼻血も出ないほどしぼる」という自分の発言は忘れたのだろうか。要するに今回の演説は「ムダ排除はやる気がない」と言っているようなものだ。
“権力維持”に焦る菅首相が掲げた
「財政再建」と「TPP参加」
首相は年明け以来、前のめり、爪先立って猛然とダッシュを始めた。政治の事情というより個人的事情によるものだろう。どうやって権力の座を維持していくか。それが焦りとなって表出している。
首相は、「税・社会保障の一体改革」と「TPP参加」の2つの旗をますます高く掲げるようになっている。
その上、野党がその協議に参加しなければ、それは「逃げている」のであり、「歴史に対する反逆行為」ときつく決めつけている。おそらく、予算委員会審議でも党首討論でもこの強硬姿勢はエスカレートするだろう。
だが、この脅迫まがいの発言は逆効果になろう。首相はきっと「野党がこんな重要な課題に協力しないと、野党にとって大きなマイナスになる」と思っているのだろうが、世論はそう甘くはない。