
「生活保護の3分の1は外国人」「医療費が外国人に食い物にされている」といった言説が流布しているが、実情はどうなっているのだろうか。生活保護・医療制度・外国人労働力という三つのテーマについて統計と制度から実態を読み解き、現実的な議論の出発点を提示する。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
生活保護に占める外国人比率は
世帯ベースで2.6%、人員ベースで3.2%
参議院選挙の一つの争点でもある外国人問題。「生活保護の3分の1は外国人」「医療費が外国人に食い物にされている」「外国人労働者の受け入れを制限すべきだ」といった声が上がる。
こうした話は本当なのだろうか。
まず生活保護について検証してみよう。
そもそも外国人が生活保護を受けること自体が憲法違反という声があるが、それは間違いである。
違反とする言説の根拠とされるのは、2014年の「永住外国人生活保護訴訟」の最高裁判決だ。だが、判決では、生活保護法の対象に外国人は入っていないとしているが、外国人が生活保護を受けること自体を憲法違反としていない。
1954年に出された厚生労働省の局長通知に基づいて、国際道義上、人道上の観点から外国人に生活保護法を準用しているのが現状だ。永住者や日本人の配偶者、認定された難民が対象であり、留学生のように就労が制限されている外国人は対象ではない。
生活保護を受ける基準は外国人だからといって変わらない。外国人が生活保護に占める比率はどれくらいなのだろうか。
厚生労働省の被保護者調査によると、25年4月現在で被保護者世帯に占める世帯主が日本国籍を持たない世帯の比率は2.6%(実数は4万2706世帯)。人員ベースで見て3.2%(実数は6万4437人)。3分の1には届かない。
総務省の4月末の人口推計概算値によると、外国人人口は355万7000人。上記の保護を受けている人員で割ると1.81%である。日本の人口総数1億2022万7000人で、4月末の生活保護を受けている全体人数199万418人を割ると1.66%。その差は大きくない。
では、医療費はどうだろうか。次ページでは、国民健康保険の統計から外国人の加入実態、医療費に占める割合を検証する。