ペンギンとアザラシだけの島にも「相互関税」!?“支離滅裂”な相手とどう交渉すればいいのかPhoto:Kevin Dietsch/gettyimages

「90日発動停止」で見直し交渉へ
相互関税の理論戦に身構えたが……

 トランプ政権の「相互関税」で、一律10%課税に加えた日本に対する相互関税率は24%だ。これは多くの人が考えていたより高かった。特にEU(欧州連合)の20%より高いことについては、多くの人が不思議に思ったことだろう。この税率は、どのようにして計算されたのか?

 トランプ政権は、アメリカが自由貿易体制の下で他国に不当に扱われていると主張、貿易相手国がアメリカからの輸入品に課税しているのと同じ率の関税をかけるという理屈で相互関税を打ち出した。「相互関税率の算出にあたっては、非関税障壁もカウントする」と述べていた。そして、EUの付加価値税や日本の消費税も関税と見なすとしていた。

 EU付加価値税の標準税率は15%であり、実際の税率は20%を超える国が多い。日本の消費税率は10%だから、対EU相互関税率は日本のそれを上回るだろうと考えられていた。

 関税率の調査だけでも大変な仕事なのに、それに加えて非関税障壁を関税率に換算するとなれば、膨大な作業量が必要になる。そうした作業を短時間のうちにできるのだろうかとの疑問も持たれていたが、ごく短時間のうちに、全ての貿易先国についての相互関税率が示された。これもまた多くの人が驚いたに違いない。

 だが実はこうした相互関税率は貿易や貿易収支についての誤った考え方の下に、ずさんなやり方で決められたことが明らかになり始めている。

 トランプ政権は相互関税の一部の発動の「90日停止」を決め、日本を含め各国はアメリカの関税見直しの協議が進めようとしているが、乱暴で理不尽な主張の相手に交渉は簡単ではないだろう。