
「『ひめゆりの塔』に関する発言は非常に不適切だった。おわび申し上げ、発言を訂正、削除する。撤回する」
自民党の参院議員、西田昌司は5月9日午後、顔をこわばらせながら頭を下げた。西田が自ら触れたひめゆりの塔に関する発言は3日の憲法記念日に那覇市で開かれたシンポジウムの場で飛び出した。西田が過去に目にしたというひめゆりの塔の展示説明について「歴史の書き換え」との持論を展開したのだった。沖縄県民はもとより野党側からも強い反発が表面化した。自民党執行部に加え、与党公明党からも批判の火の手が上がった。
口火を切ったのは自民党組織運動本部長の小渕優子。小渕は九州・沖縄サミットの開催を決断した元首相、小渕恵三の次女で、沖縄振興の先頭に立つ。
「改めてひめゆりの塔に足を運び、沖縄戦や沖縄の現状を再認識してほしい」
公明党が発言の撤回と謝罪を求めるに及んで西田は逃げ場を失う。7月の参院選で京都選挙区から立候補予定の西田は旧安倍派の裏金事件に関係していたが、公明党は西田を裏金関係候補として初めて推薦を決めたばかり。京都選挙区は激戦が予想され、公明党の支援は西田の当落に直結する。そして強気の西田が旗を巻かざるを得なかった背景には幹事長の森山裕の存在がある。西田発言を耳にした森山は静かだが断固とした怒りを口にした。
「沖縄の人たちの大きな犠牲の上に今の日本がある。沖縄に対してどんな施策をしてもし過ぎるということはない」