
飲食料品の値上げ、昨年を上回るペース
実質賃金はプラス化も伸び悩む公算
春闘は2年連続で5%台の高賃上げになる見通しだが、コメ価格の急騰や飲食料品の値上げは昨年前半を上回るペースだ。
4月18日に公表された2025年3月のコアCPI(生鮮食品を除く総合の消費者物価指数)も前年比は+3.2%と、4カ月連続の3%台で政府や日本銀行が目標とする2%を上回る物価上昇が続いている。とりわけ、コメや電気代、食料工業製品といった必需品(コアCPI対象外の生鮮食品を含む)の物価上昇が顕著だ(図表1)。
現時点では25年度のコアCPI前年比は+2.4%と予測しているが、筆者の試算ではこれによる25年度の家計支出の負担増は昨年度から8.7万円増える見通しだ。このうち食料品の支出増が4.2万円、電気御・ガス料金などのエネルギー関連が1.9万円、日用品や衣類などその他の支出増が2.7万円となる。
とりわけ低所得層の負担増は消費増税3%分に相当し、負担感を強く感じることになりそうだ。
春闘の好調で25年度の名目賃金の伸びは3%程度になると見込まれ、7~9月期には実質賃金前年比もプラス転化するものの、物価上昇のため伸び悩む公算が大きい。物価高が家計消費の重しになっている構造は変わっていない。
政府や与野党の間では、トランプ関税への対応と併せて再び物価高対策の検討が始まっているが、夏の参院選をにらんだ政治的思惑も混じる中で、「ばらまき」にならない有効な対策を打ち出せるのかが、“トランプ不況”の足音に不透明感が強まる経済を底割れさせないためにも、重要なカギになる。