世界の株式市場で存在感増す
中国のネット企業
今年は、新興国株式市場が先進国株式市場をアウトパフォームしています。その中でも、ひときわ存在感を増しているのが中国のネット企業です。
そこで今日は、中国のネット企業の中でも最大級のアリババ・グループ(ティッカーシンボル:BABA)に焦点を当てたいと思います。
「アリババ・グループ」は
アクティブユーザー4.66億人の巨大サービスを展開
アリババ・グループは、1999年に創業された中国を代表するインターネット企業で、その株式は2014年9月からNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場されています。
NYSEに新規株式公開された際の調達金額は250億ドルで、これは史上最大のIPOです。
同社は、ネット上で物品を売りたい人と買いたい人を引き合わせるマーケットプレース「タオバオ」、世界のブランド企業がオンライン・ストアを開店するためのフラットフォーム「Tモール」、オンライン卸売りの「1688.com」に加え、物流ソリューションやクラウド・コンピューティングなどのサービスも展開しています。
6月末の時点でのアクティブ・カスタマー数は、4.66億人です。
同社の会計年度末は3月31日で、「2017年度」と言った場合、それは「2017年3月31日で〆た1年間」を指します。
小売部門のGMV(=取扱高)は、下のチャートのように推移しています。
現在、アリババ・グループが中国のオンライン・ショッピングに占める割合は、75%に達しています。
「タオバオ」のビジネス・モデルは
小売よりも広告に近い
同社の中核ビジネスである「タオバオ」のビジネス・モデルは、マーケットプレースという概念です。つまり自ら商品の在庫を取り、それを消費者に販売する「小売モデル」ではなく、売り手がマーケットプレース上で買い手を獲得しやすいよう、広告などの様々なサービスを提供し、対価を受け取る、どちらかといえば「広告モデル」に近い事業形態となっています。
同社がGMV(取扱高)と売上高をハッキリ区別しているのは、このためです。
モバイルへの移行がアリババに与えた影響とは?
同社の売上高の中身は、実質的にはフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)と同じ広告モデルであるということは、GMV(取扱高)に占める広告売上高の比率、すなわちマネタイゼーション比率が問題になることを意味します。
一般にモバイル広告は、スマホの画面が小さい関係で、ノートパソコンの広告より単価が低いという問題がありました。このためユーザーがノートパソコンからスマホにシフトしたとき、売上高に下方プレッシャーが働きました。これはかつてフェイスブックが経験したのと同じ問題です。
アリババ・グループのモバイル・マネタイゼーション比率を見ると2015年は1.79%と低かったですが、2017年は3.04%へと改善していることがわかります。
アリババ・グループの業績は、1)GMVが伸びていることに加えて、2)マネタイゼーション比率も改善しているので、それらの相乗効果から急激に伸びています。
なお、2016年のEPSは、アリババ・ピクチャーズの一部株式の売却ならびにアリババ・ヘルスの特別利益の計上により嵩上げされています。そのような「雑音」を除いて考えるためには、営業キャッシュフローに注目した方が良いでしょう。
今後の成長分野として
ストリーミング事業に注力
さて、アリババ・グループは最近、映画やTVドラマのストリーミング事業に力を入れています。また、アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)のAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)に相当する、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム事業にも注力しています。
2018年度第1四半期(6月期)の同部門の顧客数は、前年比+75%の101万人で、売上高は前年比+96%の3.59億ドルでした。
【今週のまとめ】
存在感を増す中国のネット企業の中でも
リーダー的存在
今年は、新興国株式市場が好調です。中国株は、その新興国株式市場の重要な一角です。中国の上場株に占めるネット企業の割合はどんどん増えており、アリババ・グループはその中でリーダー的な存在です。同社の業績は、リーダー企業にふさわしい確りした内容となっています。
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