2月5日投開票の日本弁護士連合会の会長選挙が過熱している。立候補している非主流派の宇都宮健児氏が猛追しているためだ。宇都宮氏は「年越し派遣村」の名誉村長を務めるなど貧困問題で有名だが、消費者金融における過払い金返還請求のパイオニアであり、貸金業法の改正においても中心的な役割を果たした。会長になれば、消費者金融に対する規制の強化へと動くことも考えられるだけに、業界は戦々恐々としている。

 このほかに立候補したのは山本剛嗣氏のみ。これまでは主流派候補が勝利を収めてきたことから従来路線を継承する山本氏の圧勝かと思われていた。

 ところが、都市部では主流派が押しているものの、地方に加え年々増加している若手の動向は読みにくく、混沌としているのだ。

 宇都宮氏の主張は、司法試験合格者数の削減や裁判員裁判も必要であれば改革するというもの。前回選挙時に僅差で落選した非主流派の高山俊吉氏の主張に近く、その地盤を引き継いでいるようだ。

 もし宇都宮氏が会長に就任すれば、消費者金融業界にとって脅威となるのは間違いない。宇都宮氏はかねて、「消費者金融は過払い金を自主的に返還すべき」と主張している。これはとても払い切れる額ではなく、ほぼすべての消費者金融が倒産に追い込まれることになるだろう。

 一方で宇都宮氏の当選を歓迎すべきとの見方もある。自主返還は「法的根拠が薄く、実現は困難」(大手消費者金融幹部)とされているからだ。加えて宇都宮氏は、返還請求をする消費者から多額の報酬を取ることで非難を浴びている「ビジネス系弁護士」を苦々しく思っている。こうした弁護士になんらかの規制がかかれば、消費者金融業界にとってプラスになる。いずれにしても5日の夜には結果が出る。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

週刊ダイヤモンド