2023年の日本の政治は首相、岸田文雄が主導権を握って始まった。1月9日未明、政府専用機で米欧4カ国の歴訪に向かった岸田の表情にそのことがはっきりと見て取れた。わずか1カ月前の岸田の置かれた状況を思えば信じ難い光景だ。
内閣支持率は急落して40%台を割り込み、中には危険水域とされる30%を切り20%台に落ちた調査もあった。加えて年末ギリギリの12月27日、復興担当相の秋葉賢也を更迭した。これで10月に始まった閣僚更迭は4人目。過去の例からすれば、「政権崩壊前夜」(自民党幹部)の様相だった。どう考えても岸田の23年は「マイナスからのスタート」に見えた。
ところが岸田は一夜にして状況を一変させた。秋葉を更迭した27日夜に放送されたBS-TBSの「報道1930」に出演した岸田が衆院解散について大きく踏み込んだからだ。
「防衛費増額に伴う増税は24~27年の適切な時期に始まる。スタートの時期はこれから決めるが、それまでには選挙がある」
岸田は防衛費増額のための財政を確保しようと、増税を含む23年度の税制改正大綱を決定した。これに対して、もともと防衛増税に消極的だった自民党政調会長の萩生田光一が注文を付けた。
「増税議論の明確な方向性が出たときにはいずれ国民の皆さんに判断を頂く必要もある」(12月25日のフジテレビ番組)
言うまでもなく衆院解散権は首相の専権事項。萩生田発言には「越権行為」との批判が噴出した。ただ、萩生田自身は発言の真意について周辺にはこう説明していた。