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「えてして会社は、自らの経営幹部に対し、会社を生活の中心に据えることを期待する。しかし仕事オンリーの人たちは視野が狭くなる。会社だけが人生であるために会社にしがみつく」(『現代の経営』)
時折ドラッカーは、言いにくいことをズバリと言う。仕事オンリーだと、「空虚な世界へ移る恐ろしい日を延ばすために、自らを不可欠の存在にしようとする」と言う。
「バカな…」と否定してみても、心の奥深く行動の原点に近いところで、不可欠の存在にしようとする意識の動きを感じることがある。
一方が縛り、一方がしがみつく関係が生産的であるはずがない。「雇用関係とは、元々きわめて限定された契約であって、いかなる組織といえども、そこに働く者の全人格を支配することは許されない」 これがドラッカーの持論である。
そのうえ組織自体のためにも、組織の外の世界に関心を持つことを奨励すべきである。組織は組織のために存在するのではない。組織の外の世界のために存在する。
知性、感性、関心、価値観、その他あらゆるものについて、組織には多様性が求められている。そもそも詩人、収集家、音楽家を同僚にもつことはオツなものである。
「いまや会社は、社員を会社人間にしておくことが、本人のためにも会社のためにも危険であり、いつまでも乳離れできなくさせる恐れのあることを、認識すべきである」(『現代の経営』)