【今回のまとめ】
1.日本株反発の条件は揃った
2.米国の雇用統計は満足のいく数字だった
3 FRBは予定通り債券買い入れプログラムの縮小を試みる
4.「民間部門の底力は強い」というFRBの考えが新たに提示された
5.「黒田バズーカ」を支持したジョージ・ソロスも再び日本株を買い始めた
6月7日の雇用統計は市場予想を若干上回った
このところ日本株は調整局面に入っていましたが、6月第1週末の一連のニュースで、今週から相場が反発できる材料が整いました。まず、6月7日(金)に発表された米国の雇用統計(非農業部門雇用者数)です。
今回は、「もし数字が悪ければ、今年中に債券買い入れプログラムの縮小を始めるのは無理ではないか?」という不安が市場にありました。でも実際には市場予想の16万3000人を若干上回る17万5000人でした。
単位:千人 米国労働省統計局
この数字は「今年の夏に債券買い入れプログラムの縮小を市場に示唆して、9月頃に実際に着手する」という従来の基本シナリオを堅持できる内容です。
FEDウォッチャーも太鼓判
雇用統計が発表された直後、ウォールストリート・ジャーナルのジョン・ヒルゼンラース記者が「これでFRBは債券買い入れプログラムの縮小を予定通り始められる」という観測記事を書きました。
FEDウォッチャーというのは日本で言う「日銀番記者」に相当し、米国連邦準備制度理事会(FRB=米国の中央銀行に相当、アメリカではFRBよりFEDと略されることが多い)詰めの記者を指します。
代々、オピニオン・リーダー的なFEDウォッチャーはほとんどウォールストリート・ジャーナルから輩出されており、アラン・マレー、デビッド・ウェッセルなどの伝説的な記者が過去に相場を動かしてきました。
現在のFEDウォッチャーはジョン・ヒルゼンラースで、FRBがこれまで示していた「失業率が6.5%以下になった場合、ないしは消費者物価指数が2.5%以上になった場合に債券買い入れプログラムの見直しをする」というガイドラインをFRBが放棄し、テーパーリング(債券買い入れプログラムの縮小)をいよいよ開始するということを、いちはやくスクープした人です。
FRBが自分の口から言えないことを「あ、うん」の呼吸でヒルゼンラースに書かせているということは、半ば公然の事実として市場関係者に受け入れられています。
したがって、金曜日に雇用統計が発表された直後にヒルゼンラースが「予定に変更なし」という記事を書いたことは、極めて重要です。
さらにそれを補強する議論としてヒルゼンラースは「FRBは現在の米国の経済指標の弱含んだ理由は増税と歳出一斉削減の影響だと考えており、民間部門の底力は強い。したがって、この一時的な要因が去れば景気は年後半に盛り返す」というFRB高官の談話を引用しています。
債券買い入れプログラムの縮小は実質的な金融引き締めを意味し、これはドル高要因です。
ジョージ・ソロスも日本株をまた買い始めている
さらに金曜引け後に、ジョージ・ソロスも再び先週から日本株を買い始めているという報道がありました。国際優良株や中型の成長株を買っているそうです。
ソロスは今回の「黒田バズーカ」をいち早く支持し、シンクタンク、INETにおける経済学者、ロード・ターナーの研究を通じて「黒田バズーカ」が体現している「OPMF(Overt Permanent Money Finance、財政政策と金融政策を結びつけて中央銀行が財政赤字を恒久的にファイナンスする)」のメリットを説きました。
つまり「黒田バズーカ」の理論的な後ろ盾を提供しているご本尊が、再び日本株に戻ってきたわけです。
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