今回は今年最後の「世界投資へのパスポート」となりますので来年の予想について書きます。私の予想は以下の通りです:
(1)日経平均の目標は1万8300円である
(2)米国株式はミッドターム・コレクション(中間選挙の年の調整)があるのでトレーディング相場に
(3)為替の目標は120円
(4)スマホ、ネット関連、資産効果の恩恵を蒙る株を避けること
(5)エネルギー・セクターに注目
(6)新興国株式はパニック売りが買い場になる
それでは順番に説明してゆきます。
日経平均の目標は1万8300円である
日本株は2014年も引き続き好調になると予想しています。1年ほど前にアベノミクスという考え方が示されて以降、日本株の値動きの大部分は、ドル/円の動きで説明できました。このような連動は、今年も続くと思います。
2013年を通じてアメリカでは歳出一斉削減、政府機関の一部閉鎖、債務上限引き上げ問題を巡る議会の迷走など、景気の足を引っ張る政治問題が噴出しました。これらの雑音のせいで「米国経済って実際のところどれくらい成長しているの?」ということがきわめてわかりにくくなりました。
いま、その混乱が収まって、冷静に振り返ってみると、改めて米国の景気の腰が強いことが実感されています。先週商務省が発表した第3四半期のGDP成長率は+4.1%でした。これは2014年を通じて米国のGDPが+2.9%程度で成長するという最近の経済協力開発機構の予想が、決してムリな予想ではないことを示唆していると思います。

つまり米国のGDP成長率は2013年をボトムとして力強く反発することが予想されるわけです。
この一方で日本は消費税増税と、好調だった2013年との比較で、ハードルが高くなってしまうという2つの理由から2014年のGDP成長率はアメリカに比べると低くなってしまうと予想されています。
既に米国連邦準備制度理事会(FRB)は先週の連邦公開市場委員会(FOMC)でこれまで続けて来た債券買い入れプログラムを縮小しはじめることを決めました。とりあえず現行の毎月850億ドルの買い入れペースが毎月750億ドルに減額されます。雇用統計に大きな異変が出ない限り、毎月100億ドル程度が粛々と減額されてゆくことになりますので、2014年の夏には量的緩和政策は「消滅」するわけです。
下のグラフは日銀、FRB、欧州中央銀行(ECB)の中央銀行総資産を示したものです。イメージしやすい表現に言い換えれば、中央銀行の金庫にどれだけ国債などの証券類が貯め込まれているか? を示しています。

これを見ると「異次元緩和」を実施中の日銀と、FRBが積極的に債券を買い込んでいたことがわかります。
債券を買うという行為は、投資家にキャッシュを手渡すことを意味するので市場をキャッシュでじゃぶじゃぶにしていることに他なりません。これは通貨安要因です。つまりアメリカと日本が競って通貨安政策をしてきたわけです。
ところがそのアメリカはじゃぶじゃぶ政策のアクセルを踏み込むチカラを弱めはじめたのです。これは円安要因であり、日本株にとっては嬉しい展開です。なお目標価格の1万8300円というのは、単にチャート的に見た、次の節目がそのへんにあるというだけの理由です。
米国株式はトレーディング相場に
長期ベア相場で休養十分の日本株に対して、米国株は史上最高値を超えた水準にあります。だからテクニカル的には目標株価を測る手掛かりとなる拠り所が、全く無い状態です。
それに加えて、アメリカ株は前の年に+20%を超える好パフォーマンスを記録した翌年は、大体、冴えないというジンクスがあります。だから今、どんなに投資家皆が気分を良くしていても、来年は兜の緒を締めてかかる必要があるのです。
もうひとつ懸念材料として、来年はミッドターム・コレクションが来る年だという暦(こよみ)上の問題があります。
米国では大統領選挙は4年に1回で、前回は2012年でした。すると2014年はそこから数えてちょうど中間点に相当します。通常、この年に下院議員の選挙があります。それを中間選挙(Midterm Election)と言います。そしてこの中間選挙の年は、アメリカ株の経験則としてマーケットがかなりザックリ押し目を入れることが知られています。これがミッドターム・コレクションと言われる現象です。
FRBが慌てふためいて短期金利を吊り上げている状態の年が、たまたまこのミッドターム・コレクションの年に当たってしまうと、相場はひどいことになります。でもFRBが短期金利を据え置き、イールドカーブ(=利回り曲線)が正規の状態であるときは、調整は最大限でも-20%止まりであると言われます。
現在はインフレ懸念が少ないのでFRBが手荒に短期金利を吊り上げる必要性は全くありません。このため短期金利ほど低く、長期金利になるほど利回りが高くなるという、正規の状態が維持されています。

通常、ミッドターム・コレクションでつけた安値は、絶好の買い場であることが知られています。アメリカのトレーダー達が使っている歳時記、『インベスターズ・アルマナック』を編纂しているジェフ・ハーシュの研究ではミッドターム・コレクションから、その翌年の高値まで(=今回は2014年の安値から2015年のどこかで到来するであろう高値)の平均上昇率は+48%でした。

ミッドターム・コレクションは一年のうちのいつごろ到来するのでしょうか? 下は直近の2回のミッドターム・コレクションの時のS&P500指数の動きです。


いずれも6月から7月頃に安値が来ています。すると来年は、投資家としては(どうも相場がくたびれてきたな)と思ったらサッサと売り、キャッシュをこしらえて大きな買い場を待つというスタンスがベストということになるのです。
為替の目標はドル/円で120円
一方、為替の目標としてはドル/円で120円程度の円安を見ています。これは単純にテクニカル・チャートから見た大体の目安です。FRBが言及する超低金利政策切り上げのメドとして、最も頻繁に言及されるデータポイントは失業率です。「失業率が6.5%に下がるまでは、引き締めなど一切考えなくていいですから」というのがそのメッセージです。
しかし現在の失業率は7.0%なので、この肝心な数値まであと0.5%しかありません。前回の失業率の発表で、いきなり0.3%も失業率が改善したことを思い出せば、来年は春先早々にも「失業率がFRBのターゲットに達してしまった!」という、慌てなければいけない局面が来ないとも限らないのです。

セクター戦略
現在のアメリカ株でちやほやされているセクターは、「米国の景気がいつまでもぐずぐずしている中、どんどん成長している企業は、ほんの一握りしかない……その希少な銘柄群に属する株なら、少々割高でも投資しよう」という理屈から買われています。
金利が極端に低い局面では、そんな風に成長にプレミアムを払うことが常態化するわけです。だからフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)に代表されるような、チャラチャラした銘柄が、水準にかかわらず買い進まれたのです。
しかし来年、もし米国の景気が強くなるのであれば、別に割安な株でも利益成長を示せる企業はどんどん増えるし、逆に「低金利政策はどこかで終わる」という焦りが投資家に出ます。すると2013年に流行ったネット株などのストーリーは、とたんに色あせたものになるリスクが高いです。
iPhoneに代表されるスマホも、飽和状態になっているのでリスクが高いです。またFRBのあからさまな資産効果・株高演出政策でフトコロが肥えた裕福層を相手としたビジネス……銘柄で言えばティファニー(ティッカーシンボル:TIF)などのストーリーも、手垢のつきまくった、くたびれたアイデアだと見做されるでしょう。
逆に2013年を通じて出遅れていたエネルギー株などは、まだまだ新鮮味があります。
新興国はパニック売りが出た時が買い場
最後に新興国株式ですが、一般にFRBが金利を引き上げはじめた局面では経験則的に危機が到来するケースが多かったです。メキシコのテキーラ・ショック、タイのバーツ危機、ロシアのルーブル危機など、FRBの引き締めが引き金となった新興国の混乱の例は枚挙にいとまがありません。
新興国株式は株価収益率(PER)などの尺度から見ると、極めて割安です。その意味では、2014年、あるいは2015年のどこかで新興国株式を仕掛ける、絶好のチャンスが到来します。ただ、それは今じゃないと思うのです。FRBの引き締めでパニック売りが出て、投資家が血みどろになるまで、鷹揚(おうよう)にチャンスを待ちたいと思います。
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