世界投資へのパスポート
【第338回】 2014年10月25日公開(2017年11月29日更新)
バックナンバー 著者・コラム紹介
広瀬 隆雄

先端運転補助システム(ADAS)の
デファクト・スタンダードを目指す
モービルアイ社の株は買いか?

【今回のまとめ】
1.先端運転補助システムはドライバーに代わって事故回避行動を起こす
2.モービルアイは独自のソフトウェア、ならびに半導体を開発した
3.既に業界のデファクト・スタンダードを狙える位置にある
4.先端運転補助システムの延長にあるのは自動運転車だ

先端運転補助システムとは?

 先端運転補助システム(ADAS)とは、クルマのフロントガラスの中央上方に取り付けたカメラで前方を監視し、ドライバーが見落としがちな歩行者、自転車、動物、その他の障害物との衝突の可能性を事前に察知し、自動的にブレーキを踏むなどの回避行動をするシステムを指します。

 このシステムは居眠り運転による車線からのはみ出しや、赤信号をうっかり見落とした場合も、ドライバーに代わって是正措置を取ります。

 イスラエルに本社のあるモービルアイは、15年も前からこの先端運転補助システムの開発に取り組んできました。そして独自のソフトウェア・アルゴリズムを完成させたのです。これに「EyeQ」と呼ばれる、リアルタイムに反応する半導体をセットにして組み合わせ、世界の自動車メーカーに提供しています。

普及率は向こう5年で40%へ

モービルアイは、既にオペル、アウディ、BMW、フィアット、フォード、GM、ホンダ、ジャガー・ランドローバー、テスラなどに採用されています。2014年末までに18社の自動車メーカーがモービルアイを搭載した新車を売り出す予定で、2016年にはその数が20社に増える予定です。

 モービルアイを搭載したモデル数は下のグラフのように推移しています。

 既に今年の3月までに世界で330万台ものクルマがモービルアイを搭載して走行しています。

 現在の先端運転補助システムの普及率は5%に過ぎませんが、向こう5年で新車の4割がそれを搭載するだろうと言われています。

 モービルアイを搭載したクルマの人身事故は23%減少、衝突事故は8%減少したと報告されています。

米国当局の動き

 米国運輸省高速道路交通安全事業団(NHTSA)は先ごろ、2018年までに後方視界システムを全ての新車に備え付けることを義務化しました。これは将来、先端運転補助システムが義務化される前兆だとウォール街関係者は見ています。

自動車メーカーとの協業

 自動車メーカーは新車を開発する際、その設計段階でモービルアイのシステムと摺合せ作業をします。ひとたびモービルアイに基づいた設計がされてしまうと、後から他社のシステムに変更するのは難しいです。つまり、いまはなるべく多くのメーカーの、多数のモデルに採用してもらい、業界のデファクト・スタンダードを目指している最中なのです。

データの収集

 モービルアイを搭載したクルマが世界中を走り回ると、その走行データがどんどん蓄積されます。これは将来のシステム精度の向上の際、貴重な情報となります。

 将来的には全ての新車が常にインターネットと接続した状態になることが考えられるので、モービルアイのソフトウェアのバージョンアップもネットを通じて出来てしまうようになることが予想されます。

 さらに保険会社はモービルアイを搭載しているかどうかで自動車保険の割引などの判断材料にすることも想像に難くありません。そうなると実績が多い会社が有利になり、後発の参入はいよいよ難しくなるわけです。

自動運転車へのロードマップ

 先端運転補助システムは今のところドライバーをアシストすることが目的であり、自動運転車の段階には到達していません。しかし自動運転車は先端運転補助システムのロードマップの先にある、連続的な技術であり、既にロードマップは描けています。

 現在の先端運転補助システムはカメラ1台が基本となっています。その視野は50度です。なぜ1台のカメラだけで全ての判断をこなすかといえば、それは自動車メーカーが新車を設計する際のコストや組み立ての手間の煩雑さを省くためです。

 しかし将来的には現在のカメラの装着位置と同じ場所に150度の広角カメラ、ずっと先方が見通せる望遠カメラを加え、3台一組の体制にすることで、横から割り込んでくるクルマを感知し、高速運転している場合にずっと遠方の信号を見落とさないなど、ありとあらゆるシチュエーションに対応できるような技術が開発されています。つまりカメラ3台体制になると、自動運転車の実現は、もうすぐ手の届くところまで来るというわけです。

モービルアイ株を巡るリスク

 自動車メーカーは、普段から常に二つ以上の下請けから部品の提供を受けることを心掛けています。なぜならサプライヤーが1社しか無ければ、高い値段を吹っ掛けられるからです。すると先端運転補助システムもモービルアイと競争する、第2のサプライヤーを育成したいと考えると思われます。

 また、今後の展開如何では、モービルアイが業界のデファクト・スタンダードになれないケースもあるかもしれません。

 さらにEyeQの製造を、現在はSTマイクロエレクトロニクス1社だけに頼っている点も問題です。

モービルアイの業績

モービルアイの業績は、下のグラフのようになっています。

 ちなみに2014年のコンセンサスEPS予想は19¢、2015年は39¢です。

 下は上場後のモービルアイの株価のチャートです。

【2018年6月1日更新!】

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