【今回のまとめ】
1.アマゾンの第1四半期決算は良かったが、特にAWSの高収益が目立った
2.AWSが今後のアマゾンの株価評価を決めてゆく
3.IaaS事業の再評価が起こる
4.いずれにせよリーダーはAWSであることに変わりは無い
アマゾンが第1四半期決算を発表。株価が+14%急騰!
米国は2015年第1四半期の決算発表シーズンに入っています。先週発表された決算の中で大きな驚きはアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)の決算でした。
第1四半期のEPSは予想-13¢に対し-12¢、売上高は予想224億ドルに対し227億ドル、営業利益は2.55億ドルでした。これらの数字自体もアナリストの予想を上回っているのですが、特に注目されたのは今回の決算からアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のセグメント情報が開示されるようになったという事です。
AWSの売上高は15.7億ドル、前年比+49%でした。またAWSの営業利益は2.65億ドル、前年比+8%でした。AWSの営業マージンは16.9%で、これは市場関係者が考えていたより遥かに高い数字でした。このため先週の金曜日、アマゾン株は+14.13%急騰しました。

AWSがアマゾン全体の売上高に占める割合は6.9%に過ぎません。しかしアマゾンの全社的な営業マージンは1.1%なので営業利益で見たAWSの重要性は軽視できません。
すると今後、アマゾン株はeコマースの事業を手掛かりに取引きされるというよりはAWSが提供しているインフラストラクチャ・アズ・ア・サービス(IaaS)の関連銘柄として株価評価が決まってくる可能性があるわけです。なおIaaSはクラウド・インフラストラクチャ事業という呼び方をされる場合もあります。
クラウド・インフラストラクチャ市場ではAWSが一番
クラウド・インフラストラクチャのビジネスは去年の時点で下のようなマーケットシェアになっています。

つまりアマゾンのAWSが最大のプレーヤーというわけです。
企業はこれまでのように自前でデータ・ストレージやネットワーク機器を購入するのではなく、AWSからそれらをサービスとして提供してもらうわけです。1時間・1サーバ当たりの使用料が数セント~2ドル程度という安い値段になっているので、従来の、ITハードウェアを企業に売るビジネスは、とても太刀打ちできません。
EMC、ヒューレット・パッカード(ティッカーシンボル:HPQ)、IBMといった企業が苦戦しているのは、そういう理由によります。
日進月歩の技術進化で得られるコスト低下を、どう顧客に還元する?
IaaSのビジネスの特徴として、テクノロジーの進化でデータ・センターの運営コストはどんどん下がっていくという点があります。実際、AWSは2006年からこれまでに実に48回も値下げしてきました。
すると企業が自前でハードウェアを購入した場合、しばらくそのハードウェアを使い続けることになるので、このような日進月歩のコスト・パフォーマンスの向上を即座に享受できないという問題が生じるわけです。
企業がこれまでの「抱え込む」IT戦略から「持たない」IT戦略へ移行しているのは、そのようなテクノロジーの陳腐化、ロー・コスト化の問題と密接な関係があるのです。
AWS以外のIaaS企業の動向は?
今回のアマゾンの決算でIaaSのビジネスが思ったより遥かに儲かる商売だったことがわかったということは、各社のIaaS事業が再評価されるきっかけになると思います。
アマゾン以外でこのビジネスを展開しているのはマイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)、IBM、グーグル(ティッカーシンボル:GOOGL)などになります。
ただマイクロソフトの場合、クラウド・インフラストラクチャ(Azure部門)のビジネスをセグメント情報として開示しておらず、ソフトウェア・ライセンシング・ビジネスの一部として計上しており、Azureの業績を推し量るのは難しいです。
AWSはネットフリックス(ティッカーシンボル:NFLX)に代表されるようにウェブ企業への食い込みが強いです。これに対してマイクロソフトは事業会社への売り込みを狙っています。
いずれにせよIaaS事業は事業規模がカギになりますので、いちばんスケールの大きいAWSが有利なことには変わりありません。
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