4月28日に会社更生手続き中のJALが、国内外の計45路線から今年度内に撤退すると発表しました。これだけだと、JALもいよいよ厳しいリストラを始め、再建が進みつつあるように見えるかもしれませんが、だまされてはいけません。JAL問題の本質は別のところにあるのです。
45路線撤退を評価すべきではない
まず最初に強調しておきたいのは、45路線撤退というと、当初発表していた31路線よりも表面的には大きく増えているため、一見すごい大英断のように見えますが、実際は全然大したことないどころか、かえって問題があると言わざるを得ません。
まず、撤退する国内30路線は、もともと収益にほとんど貢献してこなかった路線ばかりです。その証拠に、羽田発着路線は一切含まれていません。それが多少上積みされたからと言って、大した意味があるとは言えません。単に、それらの路線については地元の首長からの継続要望が強くて切りにくいため、国交省やメインバンクからの減便上積み要求を逆手にとって、この機にばっさりと切っただけでしょう。
次に、国際線については、むしろ焼け太り状態です。報道では強調されていませんが、15路線から撤退する一方で羽田発の欧米アジア向け5路線を新設しているからです。羽田発でパリ、サンフランシスコなどに行くこれらの路線は収益性の高い路線であることを考えると、JALとその再生を担う企業再生支援機構(以下「機構」)は、当初の再建プランどおり3年で業績を急回復させるために、こうした減便と増便を決めたのでしょう。
このように冷静に観察すると、一つの事実が明確になります。今回の決定は、JALという一企業の再生という観点からもまだ不十分である(収益にどう反映されるかまったく不明!)のみならず、航空産業全体にとっては決してプラスにならない可能性が高い、ということです。
それは、競合相手であるANAの立場に立って考えてみれば明らかです。JALが撤退する国内線は、収益的には意味がないので競合云々は関係ありません。関係してくるのは、新設される羽田発着の国際線です。これは収益性が高いことを考えると、当然ANAも手がけることになるでしょう。もろに競合するのです。そこでJALが公的資金を原資に安売り競争を仕掛けたら、公的資金をもらわずに自力で頑張っているANAはたまったものではないし、安売りの悪循環でJALもANAも疲弊して、いよいよ日本の航空産業は共倒れになるだけです。