オンラインで記者会見する日産自動車の内田誠社長とイバン・エスピノーサ次期社長オンラインで記者会見する日産自動車の内田誠社長とイバン・エスピノーサ次期社長(右)=3月11日 Photo:JIJI

日産自動車の新社長はメキシコ出身で“カー・ガイ”、「日産愛が強い」と評されている。実は、今や日産のグローバル生産台数はメキシコがトップで、中国や日本を抜いた。トランプ関税のリスクを最小限にするためにも、北米市場に詳しい新社長が選ばれたのだろう。ただし、日産が単独で自力再建するのは容易ではない。救世主になるのは台湾ホンハイか競合ホンダか…。新社長は難しい決断を迫られそうだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

日産のメキシコ出身新社長は“Car Guy”

 3月11日、日産自動車は、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)の退任(31日付)を発表した。当初、後任候補には何人かが挙がっていたが、4月1日付でイヴァン・エスピノーサ氏(現チーフ・プランニング・オフィサー)が新社長に就任することが決まった。エスピノーサ氏は、自他ともに認める“Car Guy”(カー・ガイ、自動車の開発に情熱を注ぐ人)との見方が多い。

 エスピノーサ氏を取り巻く環境はかなり厳しい。米中市場での収益力回復と、世界の自動車業界の再編に迅速に対応しなければならない。現在、世界の自動車関連分野は100年に一度の変革期といわれている。自動車の電動化、ソフトウエアが自動車の性能を決定するソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)化が、日進月歩で進んでいる。

 それに加えて、トランプ大統領が自動車関税の引き上げを明言している。同氏は、米国での自動車・関連部品の製造再興を目指し、メキシコ・カナダとの貿易協定(USMCA)の改編に取り組む可能性も高い。

 いずれも、日米欧の自動車メーカーに大きな影響を与える。その一方、中国勢は電気自動車(EV)分野で着実に地歩を固め、米国以外の新興国などへの輸出、直接投資を増やし着実に成果を上げている。

 そうした厳しい環境下、エスピノーサ新社長は早急に組織をまとめ、持続的な成長の基礎を築く必要がある。その選択肢の一つとして、ホンダとの経営統合に向けた交渉を再開するか否か、それは日産の長期存続に重大な影響を与えることは間違いない。新社長の手腕が問われる。