石破茂首相が「東京は豊かでも幸福でもない」と主張するワケ写真提供:新潮社

日本で最も豊かな都道府県を聞かれたら、東京と答える人は多いだろう。しかし、石破茂氏はあるデータを用いて、東京が日本一豊かではないことを紹介する。本当の豊かさとはなにか。そして石破茂氏が描く日本のグランドデザインとは。本稿は、石破茂『私はこう考える』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「平均的な世帯」の可処分所得だと
東京は決して上位ではない

 この項では国民の豊かさについての興味深いデータから話を始めてみましょう。

 47都道府県の中でもっとも経済的に豊かなのはどこだと思われるでしょうか。おそらく多くの方は「東京」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。

 これは統計によっては正解で、厚生労働省の発表している「賃金構造基本統計調査」では都道府県別賃金の1位は東京で374万円となっています(令和2年版)。そのあとに神奈川、大阪、愛知と続きます。これだけを見れば「やっぱり東京は豊かなんだな」と思われても無理はありません。

 しかし、別のデータからはまったく異なる現実が見えてきます。

 国土交通省国土政策局が発表している「都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)」という資料があります。

 これによると、可処分所得の順位は全世帯平均で見た場合、東京は3位で1位は富山県、2位は福井県です。

 それでもまだ東京は上位ですから、意外性はないかもしれません。

 しかしこの資料では可処分所得の「中央世帯順位」も示しています。平均にするとどうしても富裕層が多いところの平均は上がってしまうし、貧困層の多いところは下がってしまいます。それぞれの都道府県での平均的な世帯の可処分所得を比べてみよう、ということで、可処分所得の上位40%~60%の世帯の平均を出して比較したのがこの順位です。

 この順位を上から見ると、富山、三重、山形、茨城、福井、愛知、神奈川、埼玉、京都、新潟がベスト10。岐阜が続き、東京はようやく12位にランクインします。

 つまり富裕層や貧困層を除いた「平均的な世帯」の可処分所得を比べると、東京は決して上位ではないことになります。