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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

サッカーW杯、出場せずとも示した中国の存在感
南アフリカの競技場から届くビジネスのメッセージ

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第6回】 2010年6月17日
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南アフリカから世界に発信される「百威」

 2010 FIFAワールドカップ南アフリカ大会が6月11日開幕した。サッカー好きならずともテレビに釘付けの眠れぬ日々がまた4年ぶりにやってきた。

 ただ、今回はテレビ観戦中に、ボールの行方を追う前に、私の目線はほかのものに奪われてしまった。

 ご存じのように、世界中から注目されるこうした大規模な国際試合では、競技場での広告は欠かせない存在である。今回の広告は電子掲示板になっており、スポンサーの数もかなり増えたようだ。競技場内のほとんどの広告がアルファベットで社名または商品名をアピールしているなか、一社だけが同時に商品名の漢字も出していた。バドワイザーを生産する米国のビールメーカー、アンハイザー・ブッシュだ。「Budweiser」というアルファベットの商品名の横に「百威」という中国語ネーミングも大きく表示している。

 これはバドワイザーが今回のW杯で試みた初めての挑戦ではない。4年前のW杯ドイツ大会でもすでにこのような広告作戦を敢行した。最初、テレビの画面の隅っこに「百威」という2文字だけが映っていたので、まさかとびっくりした。目を凝らしてテレビカメラのレンズがこの広告を捕らえる瞬間を辛抱強く待った。すると、きれいに見えた。アルファベット表示もあるが、その横に「百威」という漢字表現を併記している。その広告作戦に感心した。

 一人当たりのビール消費量は決して多くない中国だが、2002年から中国は国全体のビール製造量も消費量もアメリカを抜いて世界1位になっている。だから、W杯ドイツ大会での広告作戦は、バドワイザーが国別のビール消費量、一人当たりビール消費量ともに世界3位を誇るドイツの市場に殴り込みをかける絶好の機会ととらえただけでなく、同時にテレビブラウン管の向こうにいる13億人の巨大中国市場にも狙いをつけていたのだ。だから、ヨーロッパで行われているサッカー試合なのに、あえて中国語ネーミングを前面に出した。

 当時、ドイツのライバルメーカーは地元ビールを販売したい一心で動いていたのに対し、遥かなヨーロッパから「百威」という中国語ネーミングを使って中国市場にアピールしたバドワイザーは、世界的なマーケティング意識と企業戦略において一枚も二枚も上手だった。

 この広告作戦は今度のW杯でも踏襲された。ドイツよりさらに遠い南アフリカから愛をこめて中国市場にビジネスメッセージをしたたかに送り続けるバドワイザーには感心してしまう。その広告作戦の裏に綿密なマーケティング計算としたたかなビジネス意図があると感じる。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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