キリンのバドワイザー生産終了はビール市場にむしろ「追い風」か「KING OF BEERS」の異名を取るバドワイザー。主力ブランドを、ABIはいよいよ自らの手で売り込む Photo:Helen Sessions/Alamy Stock Photo/ユニフォトプレス

ビールの巨大ブランド「バドワイザー」。これまでキリンが日本での製造販売を手掛けてきたが、世界ビール最大手が自前での展開に切り替えた。世界の巨人が日本市場攻略のピッチを上げる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝)

 連日の猛暑が需要を呼び込んでビール商戦が熱気を帯びるさなかの7月24日、あるビール大手幹部の背筋が寒くなった。

 この日、キリンビールと世界ビール最大手であるアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)の日本法人であるABIジャパンが、流通向けに「バドワイザー」の販売者が変わることを通知した。これまではキリンが国内でライセンス製造・販売を手掛けていたが、年内でライセンス契約を終了する。

 同ブランドを持つABIからの提案をキリンが受け入れたもので、来年以降はABIが自ら販売を手掛けることになった。

「ついにバドワイザーもか」。冒頭の幹部は思わず口にした。

 この話には伏線がある。アサヒビールがライセンス販売をしていた「ヒューガルデン」などの商品についても今年1月、ABIは自社販売に切り替えた。このころから世界3位の販売量を誇るバドワイザーも自社で手掛けるのではないかという観測がされていた。