4ヵ月間の業務停止という行政処分のショックも冷めやらぬなか、金融庁が日本振興銀行にさらなる追い打ちをかけた。処分からわずか2週間ほどで、今度は刑事告発に踏み切ったのだ。

 告発内容は、法人としての振興銀とその役職員を対象とした銀行法違反の疑い。金融庁検査の際に、不都合なメールを意図的に削除するという検査忌避行為の悪質性や、今後の金融行政への影響などを重く見たというのが理由だ。

 とはいえこの一件は、氷山の一角にすぎないとの見方がもっぱらだ。銀行法違反は単なるとっかかりで、金融庁が手を出せなかった別の“疑惑”に飛び火していく公算が大きいと見られているのだ。

 焦点の一つが振興銀と特定の親密先企業との関係だ。関係者によれば、前経営トップと親しい企業に振興銀から、適切な審査なしで別の親密先企業数社を通じて迂回融資されていた疑いがあるという。「検査で調べられるのは、銀行本体とその融資先まで」(金融庁幹部)だったため、これまでカネの行方を追うことができなかったが、今後は警察の手によって解明が進められるものと見られている。

 さらに今回、削除されたメールの多くが、商工ローンとのあいだで取引した債権に絡むものだったことから、「捜査当局も関心を示している」(関係者)。振興銀関係者によればこうした取引は、「前経営トップ自ら主導してやっていた」といい、前述の迂回融資疑惑も含め、捜査関係者は「前経営トップの責任問題も視野に入れ、捜査を進めている」と明かす。

 5年あまり前、同じく検査忌避で刑事告発された旧UFJ銀行では、その後告発対象ではなかった元副頭取が逮捕される事態にまで発展した。今回も、告発対象は非公表ながら、捜査当局の目が前経営トップに向けられていることは確実だ。

 これまで数々の疑惑が指摘されながらも解明に至らなかった振興銀に潜む闇が、今後の捜査次第で明らかにされるかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

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