世界投資へのパスポート

株価の行方を左右する原油価格は今後どう動く?
アメリカのシェール企業は生産コストを下げ続け、
OPECもフル操業続行で“我慢比べ”は長期化の様相も

【第406回】 2016年2月22日公開(2022年3月29日更新)
広瀬 隆雄
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

<今回のポイント>
1.原油と株式市場は相関性を高めている
2.原油価格下落の原因は供給過多にある
3.米国のシェールの増産が元凶
4.サウジの「シェール潰し」にシェール企業はテクノロジーで対抗
5.シェール生産コストは今でも下がり続けている
6.原油価格低迷の長期化は、株式投資家にとって歓迎せざるシナリオ

米国株式市場と原油価格は高い連動性、
原油の供給増で原油価格が下がる構造に

 このところ米国株式市場は原油価格と連動性を高めています。つまり原油価格が高い日にはニューヨーク株式市場も高いし、逆に原油価格が安い日にはマーケットも値を消しやすいのです。

 そこで今日は原油市場を取り巻く様々な要因を整理し、今後、原油価格がどう動くかについて考えてみたいと思います。

 まず原油市場を大局的な視点から眺めます。下は世界の原油の需要と供給の推移を示したグラフです。

 原油価格は2014年第2四半期から崩れ始めたわけですが、需要には特別異変は感じられません。むしろその頃を境に供給が需要を慢性的に上回りはじめたことが問題なのです。

 そこで気になるのが「むやみに増産したのは、一体、誰だ?」ということです。

 下は世界の主要産油国の原油生産高のグラフです。

 これを見ると2008年以降、米国の原油生産高の伸びが著しいことがわかります。これはシェールオイルの増産が原因です。つまり犯人はアメリカなのです。

OPEC加盟国の多くははフル操業を続行中
サウジアラビアが減産に踏み切らない理由とは?

 またサウジアラビアを除く石油輸出国機構(OPEC)各国も、ひとまとまりのグループとして見た場合、かなり増産してきていることがわかります。このグループにはどんな国が含まれているのでしょうか? それを知るため、OPEC加盟13か国の原油生産高のグラフを下に掲げます。

 イラクはイスラム国(IS)と戦う戦費ねん出のため、増産しています。イラクの油田地帯は南部のバスラ周辺と北部のモスル周辺になりますが、モスルは最近までISに占領されていました。そのようなむずかしい操業環境の下で、フル操業に近い生産を続けているわけです。

 イランは核開発を巡って欧米から経済制裁を受けていましたが、核開発制限合意を受けて最近、経済制裁が解除されています。ペルシャ湾の石油積出港、カーグ島にはタンカーが集結しており、既に欧州市場向けのタンカーが次々に出港したところです。

 ベネズエラはチャベス前大統領の時代から買票のためのバラマキ政治が行われてきました。無責任な経済運営がたたって、現在、700%を超えるハイパー・インフレに見舞われており、経済は大混乱しています。国営石油会社ペヴェデサ(PVDSA)は、そのような異常事態の中にあって奇跡的に生産水準を維持しています。

 言い換えればアフリカ大陸と東南アジアの一部国では最近の原油価格の下落のあおりで減産に追い込まれている国が見られるけれど、全体としてはフル操業を続けている国が意外に多いというわけです。

 サウジアラビアは、かつてはスイング・プロデューサーとして需給バランスを均衡させることに一役買ってきました。別の言い方をすれば、世界でジャブジャブに原油が余っている時は減産することで価格を下支えし、逆に原油価格が急騰した局面では増産して価格を冷やすという戦略を持っていたのです。

 サウジアラビアがそのような態度を貫いていた理由は、同国は圧倒的な確認埋蔵量を持っている関係で、将来に渡って、世界の人々が安定的にガソリン車に乗り続けてくれることが国益だったことによります。別の言い方をすれば下手に原油価格が急騰し、代替エネルギーへの移行が進み過ぎることだけがサウジアラビアの懸念だったというわけです。

 しかしシェールオイルの登場は、そのような既存秩序を乱しました。米国のシェール業者がむやみに増産したので原油価格は急落してしまったし、サウジアラビアはマーケットシェアを大きく落としました。

 そこでサウジアラビアは現在のように原油価格が低迷している局面でも敢えてこれまでのような減産をせず、米国のシェール企業が倒産するまでわざと高水準の生産を維持して我慢比べをする戦略に出たのです。

シェール企業は採算ラインを次々に改善
OPECとのバトルは長期化する模様

 原油価格の下落で米国のシェール業者の業績は急速に悪化しています。そこでシェール業者は中途半端な規模で、比較的高コストな油井をどんどん休止し、最もスケールが大きく、最新鋭のテクノロジーを駆使したハイテク・リグに生産活動を集中しています。

 その関係で稼働油井数は下のグラフのように激減しました。

 しかし水平掘りの掘削距離を伸ばす、破砕法をこれまでより多用する、シェールの亀裂に流し込むポリマーを含んだ特殊液の配合量を最適化する、などによる生産性の向上で、一本の油井から産出される原油の量は現在もどんどん増え続けています。

 その結果、以前より遥かに少ない油井数で、いままでと同じ生産量を維持するどころか、さらに生産量を伸ばすことが起きているのです。結果として下のグラフに見られるように生産高にはわずかしか衰えが見られません。

 かつては「50ドルが採算ラインだ」と言われていた生産コストも著しく改善しており、現在は原油価格30ドルでも利益が出せるリグが増えています。

 サウジアラビアのもくろみ通り、次々に米国のシェール企業が倒産に追い込まれるためには、18~25ドルの原油価格が少なくとも4か月ほど続くことが必要になります。

 しかも生産コストの急改善による営業キャッシュフローの増加を見て、株式の投資家はシェール企業を見殺しにするどころか、これらの企業のバランスシート増強のための公募増資に喜んで応じる態度を見せています。2016年に入って、これまでに50億ドルものシェール企業の公募増資が敢行されました。言い換えれば「シェール企業は、死にそうで、なかなか死なない」のです。

 このことは現在の低い原油価格が、長期に渡って続く可能性が高まったことを意味します。もし株式市場と原油価格がこれまで通り連動するのであれば、それは株式にとって歓迎せざるシナリオです。

【※米国株を買うならこちらの記事もチェック!】
米国株投資で注意が必要な「為替」と「税金」とは?「特定口座(源泉徴収あり)」か「NISA口座」で投資をして、口座内に「米ドル」を残さないのがポイント!

※証券や銀行の口座開設、クレジットカードの入会などを申し込む際には必ず各社のサイトをご確認ください。なお、当サイトはアフィリエイト広告を採用しており、掲載各社のサービスに申し込むとアフィリエイトプログラムによる収益を得る場合があります。
証券会社(ネット証券)比較!売買手数料で比較ページへ
ネット証券会社(証券会社)比較!取引ツールで比較ページへ
 つみたてNISA(積立NISA)おすすめ比較&徹底解説ページへ
証券会社(ネット証券)比較!人気の証券会社で比較ページへ
ネット証券会社(証券会社)比較!株アプリで比較ページへ
 iDeCo(個人型確定拠出年金)おすすめ比較&徹底解説!詳しくはこちら!
ネット証券会社(証券会社)比較!最短で口座開設できる証券会社で比較ページへ
ネット証券会社(証券会社)比較!外国株で比較ページへ
桐谷さんの株主優待銘柄ページへ
証券会社(ネット証券)比較IPO(新規上場)比較ページへ
ネット証券会社(証券会社)比較!キャンペーンで比較ページへ
証券会社(ネット証券)比較!総合比較ページへ
【2024年4月1日時点】

「米国株」取扱数が多いおすすめ証券会社

◆マネックス証券 ⇒詳細情報ページへ
米国株の取扱銘柄数 取扱手数料(税込)
約4900銘柄 <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)※買付時の為替手数料が無料/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル)
【マネックス証券のおすすめポイント】
外国株の取扱銘柄数はトップクラス! また、米国株の買付時の為替手数料が0円(売却時は1ドルあたり25銭)となるキャンペーンが長期継続しており、実質的な取引コストを抑えることができる。さらに、外国株取引口座に初回入金した日から20日間は、米国株取引手数料(税込)が最大3万円がキャッシュバックされる。米国ETFの中で「米国ETF買い放題プログラム」対象21銘柄は、実質手数料無料(キャッシュバック)で取引が可能。米国株の積立サービス「米国株定期買付サービス(毎月買付)」は25ドルから。コツコツ投資したい人に便利なサービス。米国株は、時間外取引に加え、店頭取引サービスもあり日本時間の日中でも売買できる。また、NISA口座なら、日本株の売買手数料が無料なのに加え、外国株の購入手数料も全額キャッシュバックされて実質無料! 企業分析機能も充実しており、一定の条件をクリアすれば、銘柄分析ツール「銘柄スカウター米国株」「銘柄スカウター中国株」が無料で利用できる。
【関連記事】
◆【マネックス証券の特徴とおすすめポイントを解説】「単元未満株」の売買手数料の安さ&取扱銘柄の多さに加え、「米国株・中国株」の充実度も業界最強レベル!
【米国株投資おすすめ証券会社】マネックス証券の公式サイトはこちら
◆SBI証券 ⇒詳細情報ページへ
米国株の取扱銘柄数 取扱手数料(税込)
約5300銘柄 <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル)
【SBI証券のおすすめポイント】
ネット証券最大手のひとつだけあって、米国から中国、韓国、アセアン各国まで、外国株式のラインナップの広さはダントツ! 米国株は手数料が最低0米ドルから取引可能で、一部米国ETFは手数料無料で取引できる。また、2023年12月1日から米ドルの為替レートを「0円」に引き下げたので、取引コストがその分割安になった。さらにNISA口座なら米国株式の買付手数料が無料なので、取引コストを一切かけずにトレードできる。米国株を積立購入したい人には「米国株式・ETF定期買付サービス」が便利。また、米国株の信用取引も可能。さらに、リアルタイムの米国株価、48種類の米国指数および板情報を無料で閲覧できる点もメリットだ。米国企業情報のレポート「One Pager」、銘柄検索に使える「米国株式決算スケジュールページ」や「米国テーマ・キーワード検索」、上場予定銘柄を紹介する「IPOスピードキャッチ!(米国・中国)」など情報サービスも多彩。「SBI 証券 米国株アプリ」は「米国市場ランキング」「ビジュアル決算」「銘柄ニュース」などの機能が充実している。
【関連記事】
◆【SBI証券の特徴とおすすめポイントを解説!】株式投資の売買手数料の安さは業界トップクラス! IPOや米国株、夜間取引など、商品・サービスも充実
◆「株初心者&株主優待初心者が口座開設するなら、おすすめのネット証券はどこですか?」桐谷さんのおすすめは松井、SBI、東海東京の3社!
【米国株投資おすすめ証券会社】SBI証券の公式サイトはこちら
◆楽天証券 ⇒詳細情報ページへ
米国株の取扱銘柄数 取扱手数料(税込)
約4750銘柄 <現物取引>約定代金の0.495%(上限22米ドル)/<信用取引>約定代金の0.33%(上限16.5米ドル)
【楽天証券おすすめポイント】
米国、中国(香港)、アセアン各国(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア)と幅広い銘柄がそろっており、米国株の信用取引も利用可能! 指定の米国ETF15銘柄については買付手数料が無料で取引ができるのもお得。さらに、2023年12月からは米ドル⇔円の為替取引が完全無料! NISA口座なら米国株の売買手数料が0円(無料)なのもメリットだ。米国株の注文受付時間が土日、米国休場を含む日本時間の朝8時~翌朝6時と長いので、注文が出しやすいのもメリット。米国株式と米国株価指数のリアルタイム株価、さらに米国決算速報を無料で提供。ロイター配信の米国株個別銘柄ニュースが、すぐに日本語に自動翻訳されて配信されるのもメリット。米国株の積立投資も可能で、積立額は1回3000円からとお手軽。楽天ポイントを使っての買付もできる。銘柄探しには、財務指標やテクニカル分析などの複数条件から対象銘柄を検索できる「米国株スーパースクリーナー」が役に立つ。
【関連記事】
【楽天証券おすすめのポイントは?】トレードツール「MARKETSPEED」がおすすめ!投資信託や米国や中国株などの海外株式も充実!
◆【楽天証券の株アプリ/iSPEEDを徹底研究!】ログインなしでも利用可能。個別銘柄情報が見やすい!
【米国株投資おすすめ証券会社】楽天証券の公式サイトはこちら
◆DMM.com証券(DMM株) ⇒詳細情報ページへ
米国株の取扱銘柄数 取扱手数料(税込)
約2400銘柄 無料
【DMM.com証券おすすめポイント】
米国株の売買手数料が完全無料なので、取引コストに関しては割安! ただし、配当金が円に両替される際の為替スプレッドが1ドルあたり1円と高いので、配当狙いで長期保有する人は注意が必要だ。他社と違う点としては、外貨建ての口座がなく、売却時の代金や配当が自動的に米ドルから円に交換されること。米ドルで持っておきたい人には向かないが、すべて円で取引されるため初心者にとってはわかりやすいシステムと言えるだろう。また、米国株式と国内株式が同じ無料取引ツールで一元管理できるのもわかりやすい。米国株の情報として、米国株式コラムページを設置。ダウ・ジョーンズ社が発行する「バロンズ拾い読み」も掲載されている。
【関連記事】
◆DMM.com証券「DMM株」は、売買手数料が安い!大手ネット証券との売買コスト比較から申込み方法、お得なキャンペーン情報まで「DMM株」を徹底解説!
◆【証券会社比較】DMM.com証券(DMM株)の「現物手数料」「信用取引コスト」から「取扱商品」、さらには「最新のキャンペーン情報」までまとめて紹介!
【米国株投資おすすめ証券会社】DMM.com証券の公式サイトはこちら
【米国株の売買手数料がなんと0円!】
DMM.com証券(DMM株)の公式サイトはこちら
本記事の情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。

太田忠の勝者のポートフォリオはこちら!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

配当&株価が10倍株!
NISA投信グランプリ
ふるさと納税

6月号4月19日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[配当&株価が10倍になる株!]
◎第1特集
配当&株価が10倍になる株!
10年持ちっぱなしで「配当が10倍」になる株や「株価10倍」になる大型優良株を発掘
・誰もが知ってる大型株・優良株で実現
・新興国に進出/AI・半導体/
高齢化・人手不足/環境・EV
・番外編:1年で株価2倍になる株


◎第2特集
ダイヤモンド・ザイ
NISA投信グランプリ2024

2回を迎える、投資信託のアワードを発表!
NISAの投信選びや保有投信のチェックに最適

・NISAで運用できる投資信託のみが対象
・個人投資家が選びやすいよう、本数は30本のみ!
・個人投資家がわかりやすい部門で表彰


◎第3特集
ふるさと納税 日本3大グルメ&生産地
返礼品60 

日本3大和牛、3大地鶏、といったブランド食品や、日本3景、3名泉のベストグルメ、大注目の魚介、フルーツの3大産地の返礼品などを紹介

◎第4特集
FXで1億円!
年億稼ぐトレーダーの「神トレ」大公開!

ドル/円が34年ぶりの安値更新など、活況の為替市場。
FX界隈では、1年で「億」を稼ぐ「年億」の個人投資家が続々誕生しています。その手法を、わかりやすくお届け


◎【別冊付録】

いつまでたっても始められない人に贈る
新NISA「超ラク」スタートBOOK
完ペキさを求めてなかなか始められないより、「ラク」に「早く」始めたほうが、結果的にオトク
なかなか始められない人向け、ぐうたら指南書


◆出遅れJリートに投資チャンス! 利回り4~5%台投資判断&オススメJリート 
◆おカネの本音:渋澤 健さん
◆10倍株を探せ! IPO株研究所
◆マンガ恋する株式相場「コンビニがGAFAの一角に!?」
◆マンガ「昭和のボロ空き家はそのまま貸せばいい!?」
◆人気毎月分配型投信100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!



「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報