世界投資へのパスポート
【第411回】 2016年3月28日公開(2016年3月31日更新)
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「世界投資へのパスポート」

著者・コラム紹介

世界投資へのパスポート

広瀬隆雄 ひろせ・たかお
三洋証券、S.G.ウォーバーグ証券(現UBS証券)、ハンブレクト&クィスト証券(現J.P.モルガン証券)を経て、2003年、投資顧問会社・コンテクスチュアル・インベストメンツLLCを設立。長年、外国株式関連業務に携わっており、特にBRICsをはじめとした新興国市場に詳しい。米国カリフォルニア州在住。

広瀬 隆雄

今週金曜日(4月1日)発表の雇用統計で
「平均時給」に注目すべき理由とは?
インフレについての投資ストラテジーも解説!

<今回のポイント>
1.先週の米国株式市場は調整した
2.マーケットは「地固め」する必要がある
3.雇用統計では平均時給に注目
4.ブラード総裁の警鐘に注目
5.利上げは、かならずしもドル高を意味しない
6.インフレ圧力があるなら素材、エネルギー、工業、市況株を買え

米国株式市場は調整局面へ
今週金曜日の雇用統計に注目

 先週の米国株式市場は、ダウ工業株価平均指数とナスダック総合指数が週間ベースで-0.5%、S&P500指数が-0.7%でした。これで週間ベースの連続上昇記録は4週間でストップしたことになります。

 これまで上げピッチが急であったこと、この水準からは上値抵抗が意識されること、などから、もう一段高するためには、まずここらへんでコンソリデーション、つまり「地固め」する必要を感じます。

 今週の重要イベントは、言うまでもなく4月1日(金曜日)に予定されている雇用統計の発表です。

 3月の非農業部門雇用者数のコンセンサス予想は20万8000人です。

 同じく失業率のコンセンサス予想は4.9%です。

 でも今回の雇用統計のデータの中で最も注目されるべき数字は平均時給だと思います。ちなみに2月はこの数字が-3¢(下のグラフ中、黄色の2月の部分に注目して下さい)で、これは予想外に弱い数字でした。

 この弱い平均時給が引き金となって、先の連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたドットプロット(FRBメンバーによる今後のフェデラルファンズ・レートの平均値)は、2016年末の時点で、これまでの1.4%から0.9%へと大幅に下がりました。

 これは今年中の利上げ回数がこれまでの4回から一気に2回へ半減することを示唆する数値です。

インフレの心配が死んだわけではない
市場のインフレ期待は上昇している

 ただインフレの心配が全然無くなってしまったのか? といえば、それはそうとも限りません。

 前回のFOMCではイエレン議長が「アネクドート(裏話)としては、賃金上昇プレッシャーがある例は、たくさん、耳に入っている。いかんせん、データを見る限り、それが平均時給に反映されていない」と、ドットプロットを下げて来なければいけなかった事情を、未練たっぷりに語っていました。

 実は平均時給のデータ収集はちょうど月の真ん中あたりが締切りとなっており、2月22日から実施となったウォルマートの賃上げは、それに捕捉されていないという指摘もあります。

 このことから、一見弱々しく見える賃金が、意外なほど急激に切り返してくる可能性も無いとは言えないのです。

 賃金以外のインフレも、頭をもたげています。

 下のグラフは5年先5年物期待インフレ率のチャートで、これは米国財務省証券とTIPS(物価連動)債の利回りの差から求められ、市場のインフレ期待を表わしています。

 それによると市場のインフレ期待は、スルスルと上昇していることがわかります。これは、このところの原油価格の反発などに呼応した動きだと思われます。

マーケットに影響力を持つ
「風見鶏」のブラード総裁が釘を刺す意味

 先週、セントルイス連銀のブラード総裁が「4月26・27日に予定されている次のFOMCは捨て駒ではない」と発言しました。

 一般に市場参加者は(FRBが利上げするのは記者会見が予定されているFOMCに限る)という先入観を持っています。

 4月のFOMCは記者会見が予定されていないため、(今回は利上げはパスされるだろう)というのが強いコンセンサスになっています。

 ブラード総裁は、その時の状況に応じて、タカ派になったり、ハト派になったり、風見鶏(かざみどり)のように意見を変えることで知られています。そのタイミングが絶妙なので、マーケットに対する神通力を誰よりも持っています。

 その意味では、今回の雇用統計で、強い平均時給の数字が出てくるリスクに備えておく必要があると私は考えます。

インフレとはお金の価値が下がること
「インフレ気味の国の通貨は売られやすい」ことを知っておく

 そこで投資ストラテジーですが、皆さんに覚えておいてほしい概念は「インフレ気味の国の通貨は、売られやすい」ということです。

 普通、「利上げは通貨高要因だ」と早飲み込みするトレーダーが多いです。たしかに金利差という面では利上げ国の金利は魅力が増すので、それは一見すると通貨高要因のように錯覚しがちです。

 しかし利上げしても通貨高にならない、情けないほど弱い通貨を持つ国のエピソードには、枚挙にいとまがありません。もし利上げが自動的に通貨高を意味するのなら、なぜブラジル・レアルやロシア・ルーブルはだらしなく下がっているのでしょうか?

 それはそれらの国にはインフレ圧力があるからです。

 皆さんの中には(インフレとは、物価が上がることだ)と勘違いしている人が多いですが、それはそうではありません。インフレとは、お金の価値が薄まっていることを指します。

 お金の価値が目減りしているから、前よりも沢山の金額を払わなければ、昔と等価の財やサービスを手に入れることが出来ないのです!

 さて、今後米国で利上げの議論が再燃した場合、それはドル高に直結するか? といえば、それはそうとも限らないということを私は主張したいのです。

 ブラジルやロシアのように、利上げしても通貨高にならない国は、掃いて捨てるほどあります。

 むしろインフレのリスクに対して、フェデラルファンズ・レートの水準が「後手に回っている」かどうか? の判断の方がはるかに重要です。

 利上げということになると、株式は一旦、調整するでしょう。その後、出直りが早いのは、インフレの環境下でアウトパフォームしやすいセクター、具体的には素材、エネルギー、工業、市況株ということになります。
 

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