世界投資へのパスポート
【第418回】 2016年5月17日公開(2016年5月17日更新)
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「世界投資へのパスポート」

著者・コラム紹介

世界投資へのパスポート

広瀬隆雄 ひろせ・たかお
三洋証券、S.G.ウォーバーグ証券(現UBS証券)、ハンブレクト&クィスト証券(現J.P.モルガン証券)を経て、2003年、投資顧問会社・コンテクスチュアル・インベストメンツLLCを設立。長年、外国株式関連業務に携わっており、特にBRICsをはじめとした新興国市場に詳しい。米国カリフォルニア州在住。

広瀬 隆雄

テスラ・モーターズの「モデル3」が成功すれば
「白い石油=リチウム」の需要は爆発する!
その際、恩恵をこうむる3銘柄と投資の注意点とは?

予約好調の「モデル3」1台に使用される
リチウムの量はiPhoneの1万個分

 テスラ・モーターズは2017年末から「モデル3」を納車開始する予定です。その後、2018年末までに50万台を納入する予定で、これは当初の計画より2年も前倒しとなっており、そのアグレッシブな姿勢が話題になりました。すでに「モデル3」には40万台を超える予約注文が入っています。

「モデル3」1台に使用されるリチウムの量はiPhoneの1万個分だと言われています。

 このためテスラ・モーターズのイーロン・マスクCEOは「わが社だけで、現在世界で生産されている全てのリチウムを使い切ってしまう計算になる」とコメントしました。

 このコメントを聞いて、ウォール街では「リチウムは、白い石油だ!」ということが囃され始めています。

リチウムは希少資源ではないが
チリ、中国、アルゼンチンに“偏在”している

 しかし、それはリチウムが枯渇することを意味しません。

 リチウムはふんだんに存在する資源で、その採取は容易です。従って需要が増えれば増産すれば良いだけの話であり、他の希少資源のように価格が急騰するというようなシナリオは期待しない方が良いと思います。

 唯一、リチウムに関して注意すべきことは、それが偏在しているということです。下は主なリチウムの埋蔵国です。

 このパイチャートからもわかるように、チリが圧倒的なリーダーです。

 アルゼンチンは、つい最近になってリチウム鉱の開発に乗り出しています。アルゼンチン産のリチウムが増えると需給関係は悪化すると予想されます。

 またボリビアなど、現在は未だリチウムを生産していない国でも、開発、生産が始まる可能性があります。

 さて、次にどの企業がリチウムを生産しているのか? という点ですが、上場企業は3社に限られます。それらはアルベマール(ティッカーシンボル:ALB)FMC(ティッカーシンボル:FMC)SQM(ティッカーシンボル:SQM)です。この3社はリチウムの生産高で、ほぼ拮抗しています。

 アルベマールは米国の企業で、リチウムの他に臭素系難燃剤、非ハロゲン系難燃剤、リン・塩素系難燃剤などを生産しています。

 FMCも米国の企業で、リチウムの他に除草剤、殺虫剤、殺菌剤などを作っています。

 SQMはチリの会社で、米国預託証券(ADR)がニューヨーク証券取引所に上場されています。

リチウムを生産している上場企業3社の中で注目されるSQM
投資にあたっての注意点とは?

 これらの3つの企業の中でSQM(ティッカーシンボル:SQM)は特に興味深いストーリーだと思います。

 チリでは1830年代から硝酸ナトリウムの生産が始まり、肥料や火薬の原料として使われてきました。

 SQMは1968年にチリ政府の直営企業コーフォと民間資本のジョイント・ベンチャーとして創業されました。

 1983年からチリ政府が民営化プログラムを開始し、その一環としてSQMの株式はチリのサンチャゴ株式市場に新規株式公開されました。

 そして1993年に米国預託証券(ADR)がニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場されたのです。

 現在の株主構成は下のようになっています。

 米国の一般株主の方がチリの一般株主より多いことからも推察される通り、同社株の取引は、サンチャゴ株式市場よりNYSEの方が活発です。

 次に同社の売上構成は下のようになっています。

 リチウムは全体の13%に過ぎません。

 同社のリチウム市場におけるマーケットシェアは26%です。

 とりわけ注意すべき点は、同社の売上高の約50%は、ブラジルをはじめとした新興国だという点です。

 このところ南米の各国の通貨は極端な経済の低迷で下落していました。そのような環境では、輸入肥料の価格が高騰するため、肥料が買えなくなってしまうのです。

 その関係で、同社の業績もずっと頭打ちでした。

DPSは一株当たり配当、EPSは一株当たり利益、CFPSは一株当たり営業キャッシュフロー、SPSは一株当たり売上高

 上のグラフで注目される点は、なるほど売上高は漸減しているけれども、一株当たり営業キャッシュフロー・マージンは25%もあるという点です。つまり「儲かる体質だ」ということです。

 ここへきてようやく南米の経済にも長くて暗いトンネルの先に光が見え始めています。

 一例としてアルゼンチンは新政権の下で実に15年ぶりに国際資本市場に復帰し、アルゼンチン国債を成功裡に販売しました。

 ブラジルでは機関投資家から不人気なルセフ大統領が停職され、副大統領のミシェル・テメル氏が大統領代行を務めます。半年後に予定されている弾劾投票でルセフ大統領の罷免が正式に決まれば、ミシェル・テメル大統領代行は、そのまま大統領となり、2018年まで大統領を務めます。

 テメル大統領代行はブラジル民主運動党(PMDB)党首、下院議長を歴任した経験豊かな政治家です。またブラジルが軍政から民政へと移行した際、制定された1988年憲法の起草者のひとりです。彼は小さな政府を提唱しており、欧米の機関投資家からは好意的な印象を持たれています。

 またブラジルの主要輸出品目である大豆の価格は、ようやく底入れし反発しています。

 リチウム価格に関しては、近年、強い需要を反映して強含んでいますが、2016年にはアルゼンチンがリチウムの生産を立ち上げるので、供給が増え、市場が崩れるリスクがあります

 もうひとつのリスク要因として、SQMのリチウム生産の費用計上に関し、チリ政府直営企業コーフォとSQMの間で、係争関係にある点です。

この係争を片付けないとリチウムの増産に着手できないと思いますので、注意が必要です。


■SQM(ティッカーシンボル:SQM)の最新株価はこちら(SBI証券のサイトへ移動します)

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