2010年夏の高校野球は、沖縄県代表興南高校が優勝を飾った。春夏連覇という快挙であり、夏の甲子園においては初めての優勝だった。

 高校野球熱の高い沖縄県では、仕事の手を止めて地元選選出の高校を応援する人も多い。居酒屋の中には地元高校の試合があるときに、昼間にもかかわらず店を開け、観戦しながら飲食をするイベントを行っているところもある。さながら、野球のWBC、サッカーワールドカップのような熱狂である。

 しかし、そんな沖縄も復帰前の高校野球のレベルは低く、本州の高校に歯が立たなかった。復帰から今年で38年。今では日本でも有数のハイレベル地域である。

 野球だけではない。ゴルフの世界では今や世界ランキングトップレベルの宮里藍をはじめ、プロ選手を多数輩出している。あまたのスポーツ界で沖縄が最高水準の選手を輩出していることは、多くの日本人が認めることであろう。

 また、芸能界においても、テレビで沖縄出身の方々を見ない日はないと言っていいほど多くの人が活躍している。沖縄アクターズスクールで育った、歌って踊れる女性たち。BIGIN、HYなどの実力のあるバンド。映画の世界で活躍している俳優(男女)も多い。かつて南沙織が登場したときのような珍しさはすでになく、芸能人を多く生み出す沖縄県のイメージはすでに定着している。

 ビジネスの世界ではどうだろう。

 今回は、イントロダクションとして沖縄ビジネスと企業の全体像を掴んでいくこととしよう。

本州からの沖縄進出は難しい?
地元企業と合弁をするケースも

 あまり知られていないことが多いと思うので、イメージをつかんでいただくために、まず数字で沖縄を見ていきたい。

 県民1人あたり平均所得は全国最低の約200万円、失業率も10%近く常に高止まりしている。沖縄県の人口は約140万人でエリアGDPは3.7兆円である(2009年IMFデータ)。

 沖縄における主要産業は「3K」と呼ばれる、「観光・建設(建築)・基地」だ。その中でも安定的なのが、観光産業である。2009年は少し減ったものの、ここ20年で約3倍の600万人を越える人々が観光やビジネスで訪れている。日本政府も「訪日外国人を1000万人突破!」を目標としているようだが、沖縄県も「入域者数1000万人超」を目指しているようだ。

 製造業は厳しい環境にある。東京から飛行機で2時間以上かかる南洋の島であるから、市場を拡大しようにも輸送コストなどを考えるとそれも難しい。第一次産業・二次産業においては、ビジネス的には孤立した商圏である。