
トランプ関税が世界経済を揺るがす中、日本政府や企業からは「トランプ大統領は何を考えているのか?」という悲鳴にも似た声が噴出しています。政権に返り咲く前からこうなることはわかっていたとはいえ、いざ「トランプ劇場」が始まると、その衝撃は想像以上に大きかったと言えます。
なにせ前例のない相手ですから、石破首相はじめ日本政府は、いったい何が起きているのか、「トランプ流」とどう向き合っていいのか、現状を正確に理解する術もなく、困り果てています。
こんなときに案外有効なのが、国レベルで起きているような大きな事象を、一企業の会議室の中で起きているような小さな事象に、なぞらえて考えてみることです。身近な視点で観察することにより、今起きている状況が頭の中でわかりやすく整理される上に、うまくいけば有効な対策を思いつくきっかけになるかもしれないからです。
ということで、今回は「もしもトランプが元請け会社の社長だったら」というテーマで、物語風にトランプリスクの本質に迫りたいと思います。さて、日本の起死回生策は見えるでしょうか――。
元請けから24%のキャッシュバック要請
日本自工の会議室は議論紛糾
東アジアの島国にある世界第4位の売り上げを誇る自動車部品会社・日本自動車工業の会議室では、イシバ社長がアタマを抱えていた。
「いくら世界最大の会社だからといって、元請けが下請けに対して一律24%のキャッシュバックを要求するなんて許されるのか?この前アメリカまで行って、就任挨拶したときは『世界で一番親しみを感じるグレートな会社だ、ずっと友好的関係でいたい』と言っていたのは嘘だったのか」