
長期投資において、惚れ込んで買った「推し企業」の株を保有し続けるのか、それとも手放すのかを悩むタイミングは必ず訪れる。投資家・中島聡氏によれば、かつて手放した株をもう一度買い直すなどの柔軟な判断も時には必要になるのだという。メタトレンドの流れに乗って10倍100倍に大化けする株を狙う「推し投資」のポイントを解説する。※本稿は、中島 聡『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。
一度は売った推し株を
再び買い戻した理由
私の“推し投資人生”において「一度は惚れ込んだ企業を嫌いになり、株をすべて手放したが、何かをきっかけにまた“推し”として戻ってくる」というケースも珍しくありません。
例えば私の場合、Meta(旧Facebook)の株を早い段階から保有していましたが、同社が2021年にメタバース事業に注力する姿勢を示したのを機に、すべて売却しました。CEOのマーク・ザッカーバーグ氏のビジョンが、私の考えるメタトレンドや推し投資の方針と大きくズレたように思えたからです。シンプルに言えば、「これはうまくいかない」と感じたのです。
実際に、Metaのメタバース構想に対して投資家たちの懸念は高まっていきました。2022年のReality Labs(リアリティ・ラボ:Metaのメタバース部門)の営業損失は137億ドルに達しました。株価も2022年の1年間で64%下落。この状況を受け、Metaは戦略の見直しを迫られることになりました。
その後、Metaはメタバース路線への固執をいったん緩め、AI分野への積極的なアプローチを打ち出しはじめます。2023年2月には「Llama(ラマ:Large Language Model Meta AI)」という大規模言語モデルを発表。さらに同年7月には「Llama2」がオープンソース(無償で一般公開)で公開されました。
特にこのオープンソース化の動きには目を見張るものがありました。大規模言語モデルを研究者やデベロッパーに広く公開することで、AIの発展を加速させる狙いが見て取れたからです。オープンソース、つまり誰でも使える状態にすることで、いわば「AIの民主化」を先導したのです。
気持ちが離れて売却したあと
“元の鞘に収まる”のは全然アリ
また、オープンソース化によって、Metaを中心としたAI開発のシステムが普及するきっかけになります。これによってOpenAIやGoogleが先行するAI市場において、独自のポジションを確立しやすくもなりました。
そして、それまでは取り憑かれたようにメタバース関連の発言が多かったザッカーバーグ氏も、次第にAIの重要性を打ち出すようになったことも好印象になりました。