ルネサス テクノロジ(日立製作所と三菱電機の半導体合弁会社)とNECエレクトロニクスが統合して誕生したルネサス エレクトロニクスは、強豪ひしめく世界の半導体市場で生き残っていけるのか。回路線幅28ナノメートル以降の先端半導体製品の量産を断念し、外部ファウンドリへ全面的に委託することを決めた赤尾社長に、その決断の背景などを聞いた。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

ルネサス エレクトロニクス<br />赤尾 泰社長インタビュー<br />「50年後もその先も存続できる<br />会社の“礎石”を築きたい」ルネサス エレクトロニクス社長 赤尾 泰
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 重い決断だった。回路線幅28ナノメートル以降の先端半導体製品の量産を、全面的に外部ファウンドリ(台湾TSMC)へ移管することにしたのだ。今後、先端半導体に関して、新たな生産設備を造ることはしないし、大規模な研究開発投資をしないという明確な意思表示である。

 もちろん、実務レベルでは、先端技術の蓄積を途絶えさせてしまってもいいんだろうか、という議論はあった。だが、経営判断で待ったをかけた。巨額の設備投資を伴い、かつ、ビジネスの果実を刈り取るまでに時間のかかるハイリスク・ハイリターン型の事業はやらない。幸いにも、ルネサスには世界首位のマイコンという主力製品があり、これまで先端半導体の試作に専念してきた生産設備を有効活用できる。

 重複事業・製品を省き合理化する作業の過程においても、旧ルネサス テクノロジと旧NECエレクトロニクスとのあいだで、血みどろの勢力争いが起きている、ということもないんですよ。先端半導体の案件と同様に、そりゃあ実務レベルでは葛藤もあったでしょう。けれど、私はあらかじめ「重複事業・製品はもとより、両社でやってきた似て非なることに至るまで、必ず結論は一本化してくるように」と厳命している。そういう環境設定をあえてしているので、実務部隊でもまれた結果を見る限りにおいて、出身母体の利益を優先させたような結論は上がってきていない。